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リアルな戦場を伝えたい

 ビデオカメラを手に世界中の紛争地域を駆け回る。山本美香さん(44)はアフガニスタンや、コソボ、チェチェン、イラクなど、10カ国以上を取材してきた、日本人女性では数少ない戦争ジャーナリストの一人。「戦争がなくなる方向に人の心を動かす努力を惜しまない」ことが信念だ。
(この記事は2011年春に取材、同年7月に掲載したものです。再掲載します)

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戦場での決意

  2003年、イラクで取材中に戦争が始まった。戦争回避を願っていたのに突然米軍の爆撃が始まり、信じられない気持だった。「ブッシュ!これを見ろ!」。ベッドには息も絶え絶えの幼い男の子。米軍の空爆で大けがを負ったのだ。怒りで震える幼子の父親が、山本さんが構えるビデオカメラに訴えるように叫んだ。何の罪もない一般市民が攻撃された。「今、ここにいる自分が絶対にこの状況を伝えなければいけない」

 

卒業からフリーランスへ

  大学卒業後、CS放送局に入社した。小型のビデオカメラを使って報道する「ビデオジャーナリズム」の仕事を任された。取材、撮影、編集、リポート、全部自分で行った。「自分は現場に出ることが全て」。そう感じるほど、のめりこんだ。内勤への異動辞令を受けた後、フリーランスになることを決めた。

 

戦争取材のきっかけ

  戦争取材を始めた大きなきっかけは、1995年、独立系通信社ジャパンプレスの佐藤和孝さん(55)が取材、制作したTVドキュメンタリー「サラエボの冬」を観たことだった。「最前線の兵士から、戦火に暮らす民間人まで、取材対象に肉薄する機動力、映像の臨場感。見る者がその場に居合わせてしまったようなリアリティがあった」。強い衝撃を受け、ビデオジャーナリズムの可能性を感じ、この道を歩みたいと目標に据えた。ジャパンプレスにも所属した。

 

責務を果たす

  昨年3月、イラク総選挙を取材した。「私も一票入れました」。自由に投票できることを喜ぶ女性達の笑顔に、国を良い方向に変えていきたいというパワーを感じた。「開戦の日をイラクで伝えたジャーナリストとして、戦争の行方を追うのは私の責務です」

  次も、民主化をめぐり、情勢が不安定な中東の取材を考えている。

 

 

※この記事は、2011年度J-School春学期授業「ニューズルームD(朝日新聞提携講座)」(林美子講師)において作成しました。

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