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研究への熱意を示す? エフォート率

 一般にはなじみがない「エフォート率」という言葉。研究資金を集めたい研究者にとっては、実はちょっと頭の痛い数字である。「エフォート率」とは、国の競争的研究資金に応募するときに求められる指標のひとつで、研究者が1年間に仕事をする時間を100%と考え、応募する研究にどのくらいの時間があてられるかを、パーセンテージで示すものである。

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 エフォート率を活かせ!

 エフォート率は、どのように使われるのだろうか。これまで競争的研究資金の分配で問題とされてきたのは、研究費の「不合理な重複」と「過度の集中」である。「不合理な重複」とは、同じ研究者、同じ研究課題に、いくつもの資金が重なって提供されることを指す。「過度の集中」とは、同じ研究者または研究グループが、研究費が配分される年度内に、その研究費を効果的、効率的に利用できる限度を超えて提供されている状態をいう。これらを改善するために、審査する際に「エフォート率」を一つの指標として利用し、適切に資金を配分しようというのである。

 2008年1月に府省共通研究開発管理システム(通称e-Rad:Electric Research and Development)がスタートし、各府省の競争的資金やプロジェクト研究などを一括して管理することになった。これまでは、どこの省庁が誰にどのくらいの資金を提供しているのか、お互いにわからなかった。e-Radの開始により各府省は、どの研究者が現在、どういう課題にどのぐらいの予算とエフォート率で取り組んでいるかを、リアルタイムで把握できるようになった。文書の電子化とともに、これまで問題とされてきた「不合理な重複」と「過度の集中」を排除し、適切に研究費を分配することが可能になったわけである。

 

研究資金を求めて

 そうなると、競争的研究資金を獲得したい研究者は、研究にかける熱意を示すためにも高いエフォート率を提示したくなる。
 たとえば某大学に勤めるT氏の場合、大学のプロジェクトにエフォート率100%で雇われているので、新たに競争的研究資金を獲得することができない。しかし、彼は若手研究(スタートアップ)研究資金に、エフォート率20%で応募するという。T氏の場合、大学の勤務条件は週4日の8時間勤務。1週間は7日だから、残り3日のうちから研究に充てる時間を作り出せば、エフォート率120%は可能というわけだ。
 しかし、エフォート率は自己申告制である。現状から目をそらし、実情とは違った申告をする研究者もいるらしい。研究者は、研究のためにとにかく研究資金の獲得に一生懸命だ。
 これまでも、競争的研究資金は若い研究者に届かないという議論があった。研究資金は50歳代の研究者に多く渡っていて、35歳未満の研究者には少ないというデータもある。エフォート率はあくまでも目安に過ぎないが、研究資金が若手の研究者にも適切に分配される一助になり、求められる研究開発が進むよう祈りたい。

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※この記事は、08年のMAJESTy授業「科学技術コミュニケーション実習2」において、青山聖子先生の指導のもとに作成しました。