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体内毒素が蓄積する?

-不安につけこむデトックス療法-

「体内に毒素が蓄積している」と聞いて、思い当たる人も多いだろう。添加物たっぷりの食品、排ガスが混じった空気など、私たちの身の回りには、体内に毒素がたまりそうなものがあふれている。もし、それらが慢性的な疲労感や肌の不調、便秘などにつながっていると言われたら「解毒したい」という気持ちに駆られるかもしれない。そんな現代人の心をつかんでいるのがデトックス療法だ。しかし、その「効果」は本物なのだろうか。

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足裏デトックスの「毒」の正体

 体から毒素を追い出せば「美肌になる」とか「健康になる」などとうたわれ、女性誌では特集が組まれることも多いデトックス療法。解毒の方法は、ゲルマニウム温浴、ヨガ、断食、マッサージ・・・など様々。やっていて楽しい、気持ちいいと人気を呼んでいる。ところが、その効果の科学的根拠は定かでない場合が多い。なかでも、「足裏デトックス」は、週刊誌やテレビのニュース番組内で「ニセ科学」として取り上げられた。

 

 足裏デトックスは、電極と溶液を入れたフットバスに足を浸しているだけで毒素が体外に排出されるというもの。何分か足を浸していると、透明だったお湯が褐色・黒色に変化する。説明は業者によってまちまちだが、この色の変化は、「毒素が排出された証拠」らしい。
 しかし、実はそれこそがニセ科学と言われたゆえん。色が変わるのは、食塩水に鉄の電極を入れて電気分解をした結果だそうだ。電気分解を行うと水酸化イオンや鉄イオンが発生し、溶液の性質によってはこれらが沈澱して汚く見える。特に鉄イオンはもともと赤褐色で、これがフットバス・デトックスのいう「毒」の正体らしい。

 

 こう説明すると、「あれが毒でなかったら、どうして足があんなに軽くなるの?」という反論がきそうだ。だが、サロンが行う”化学反応ショー”に、私たちがだまされているとすれば、それは問題ではないか。
 しかも、フットバスは塩素が含まれた溶液が使われているために、肌が荒れるというマイナス面も指摘されている。さらに、デトックス療法全般に対して、解毒は肝臓などの器官で十分にできるという専門家の意見もある。
もちろん、デトックスを楽しむことまで否定するつもりはない。現象の陰にある科学を意識しながら、賢く利用してはどうだろうか。

 

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※この記事は、08年後期のMAJESTy授業「科学コミュニケーション実習2」において、青山聖子先生の指導のもとに作成しました。

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