(トップ写真:KORECを運営している春日井萌さん=KOREC提供)

コロナ禍の中でも日本就職熱の韓国 ソウルの「日本就職カフェ」運営の春日井萌さんに聞く

 就職が厳しい韓国では日本への就職を目指す学生が年々に増えている。2019年10月末に厚生労働省が発表した外国人雇用状況によると、日本に就職した韓国籍の総数は6万9191人。前年に比べて10.7%増加した。なぜ韓国の若者は日本への就職に目を向けるのか。ソウル・新村(シンチョン)で「日本就職カフェKOREC」を運営し、就活生を指導している春日井萌さん(30)に話を聞いた。

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 「日本就職カフェKOREC」がある新村は、延世大学などがある韓国の代表的な大学街として知られている。KORECは日本で大学生の就活を支援している株式会社Bwell(本社・大阪市)の下、春日井さんが運営している。

 春日井さんは千葉県出身、高校卒業後、韓国に渡って延世大学に進学した。2016年に卒業すると、いったんは日本の企業に就職したが退社。韓国に戻った春日井さんは2017年、韓国人の日本での就職をあっせんする事業を立ち上げた。さらに、日本の大学街に多くある「就職カフェ」を韓国でも作りたいと思い、Bwellにかけ合い、2019年5月に母校・延世大学のある新村に「就職カフェ」を立ち上げた。「就職カフェ」とは、就職生を向けに関連資料を閲覧、インターネットを無料で利用できるフリースペースを提供している。また、就活関連のセミナーやイベントなどを開催、カウンセラーによる相談なども行われている。韓国で日本への就職を希望している学生を対象に、就職の相談、ESの書き方や添削、面接対策や模擬面接などを指導し、大学生の就職活動に役に立つスペースとして就活関連の資料も提供している。

 「韓国の場合、即戦力採用であるため、専攻と業界が直結しないと採用されにくい傾向が強いのです。日本の場合は必ずしもそうではなく、みなさん自由に業界を選ぶことができます。そのため韓国では様々なチャレンジができる日本への就職を好む傾向にあると思います」と春日井さんは話す。韓国人が内定をもらう企業もITやサービス業、製造業、メーカーなど様々だ。カフェを始めた当初は、韓国の大学を卒業して日本で就職を目指す人からの相談が多かったが、今は日本や他の国の大学に通っている学生からの相談も徐々に増えているという。

危機をチャンスに!

 最近では、新型コロナウイルスの影響で日本に渡れないことや、ビザの発行が停止になっている中で、就職活動をしている学生たちのモチベーションが下がり、悩みが深まっていることを感じると春日井さんは言う。

 特に、日本での就職を目指す3つの層(図)で、1番上の「絶対日本で就職したい人の層」は厳しい状況の中でもあまり変わらないが、2番目にあたる「少し興味があると思う層」の場合、国内就職に目を向ける人が増えていると言う。こうした傾向について春日井さんは「確かに過去に比べてより苦しい現状ですが、選考過程がほぼ全てオンラインに切り替えたため、わざわざ日本に行く手間がかからない。時間的な面でも費用的な面でも楽になったと思います」と、むしろ海外で就活する人にとって今はチャンスだと指摘した。

(「日本就職カフェKOREC」には就職関連の書籍が置かれている=金素恵撮影)

 春日井さんは、「長期的に考えると、頑張って日本で就職する方がいろんな仕事にチャレンジできる」と、就活生にアドバイスしている。外国人だから就職できる業界も外国人の語学力を活かしたサービス業だけ絞らず、様々な業界に就職をしていると話し、チャレンジできると励ます言葉を送った。また、日本語を習うことに戸惑っている人には「ひらがなから勉強して、最終的に3社ぐらい内定もらった人もいます」と説明。「諦めずに頑張っている人たちは今の時期でも内定を取っている。モチベーションを高めてやって欲しい」と就活生にエールを送った。

※この記事は2021年春学期「ニューズライティング入門」(朝日新聞提携講座)」(岡田力講師)において作成しました。

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