「交流事業を通じて会った子どもたちが宝物」と語るNPO法人「ayus仏教国際協力ネットワーク職員」の寺西澄子さん=2019年5月19日、東京都新宿区の早稲田大

絵画を通じ、北朝鮮との国際交流に関わり続けて

 長年JVC(日本国際ボランティアセンター)で、北朝鮮への交流事業に関わり続けてきた寺西澄子さん(42)は、今年度も「南北コリアと日本のともだち展」の開催に向け準備をしている。日本・韓国・北朝鮮・中国の子どもたちが同じテーマで描く絵を集め展示する。かつて人道支援を通して出会った子どもたちの日常を日本社会に伝えたいという思いから始まった。18年目を迎える今回のテーマは「わたしの金メダル」。子どもたちが今、褒めてあげたい人を思いながら絵を描いた。作品は来年2月中旬から大阪・東京などで展示される予定だ。

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 1977年東京都生まれ。大学では東洋史への関心から、第二外国語で韓国・朝鮮語を選択し、韓国の大学に交換留学をした。NGOに関わるきっかけは、交換留学時代にさかのぼる。1995年に起こった大雨洪水の影響で、北朝鮮では大規模な食糧不足や飢餓が起きた。JVCは96年に現地入りし、98年には他の国際NGOも集まり支援のための会合が韓国で開かれた。寺西さんはこの会合に知人を通じて通訳として参加。「北朝鮮への支援団体の存在を、日本や韓国でこんな北朝鮮の支援をしている人がいるのか」と初めて知り、帰国後NGOの世界に飛び込んだ。

 「南北コリアと日本のともだち展」は、2001年5月からJVCをはじめとする複数のNGOが協力しながら継続している事業だ。当初は、この事業に対する北朝鮮側の理解を得ることに苦労した。資金が集まらず、JVCの他事業から回してもらう事もあった。北朝鮮側の絵がなかなか届かず、展示日直前にたまたま北朝鮮に観光で訪れていた日本人を経由し受け取る事もあった。

 しかし、何度も訪朝し、企画の意図や交流を進める中で、北朝鮮側とこの事業の意義を確認し合うことができた。かつてこの事業で絵を描いた子どもが平壌外国語大学の日本語学科に進学し、「再会」を果たす事もあった。そうした経験を経て、「地域の平和のために何かしたいと思う人に出会えることが一番の財産だ」と話す。

 この事業を続ける原動力とは何か。「今はまだ、このような交流機会を得る人たちはすごく少ない。個人的にそういう体験をする人を増やせたら、世の中が少しずつ変わるかもしれない。この事業を通じて、子どもたちに少しでも面白いなとか、あの時何か絵を描いたなという記憶が残ればよい」と話す。

 今年3月で19年間勤めたJVCを退職し、同じくこの事業に関わるNGOのayus仏教国際ネットワークに移籍した。「北朝鮮への支援は色々な方面からアプローチしていく必要がある。次世代を担う人材育成をしながら、引き続き現地の思いや未来を担う子どもたちの様子を伝えたい」と意気込む。

 

この記事は2019年春学期「ニューズライティング入門(朝日新聞提携講座)」(柏木友紀講師)において作成しました。

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