キュリオ・ジャパン代表取締役の今西由加さん。子どもと一緒に短期留学するなど、チャレンジ精神に溢れている=2017年5月17日、東京都世田谷区、黒田杏子撮影

留学生シッターと幼い頃から異文化体験を

世田谷区の今西由加さん、今年3月開始

幼少期から異文化と多様性を楽しく学べる環境を――。東京都世田谷区在住の今西由加さん(44)は、2017年3月、留学生によるシッターサービス「chezmo family(シェズモファミリー)」を開始した。日本の大学に留学している海外からの学生が、子供の迎えから家でのシッティング(世話)まで担当してくれるサービスだ。なぜ今、留学生によるシッターサービスなのだろうか。

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 オフィス兼自宅のドアを開けると、すぐに子供たち数人の笑い声が聞こえてきた。シェズモファミリーを運営するキュリオ・ジャパン株式会社の代表取締役、今西さんは一児の母親でもある。自身の子育ての経験から「異文化理解と多様性」をキーワードに、留学生のシッターサービスを提供し始めたばかりだ。

 世界各地から日本に留学している学生たちが「シェズモバディ」と呼ばれるシッターとなり、保育園や学童保育などに子どもを迎えに行く。到着すると、子どもたちにすぐに囲まれてしまうくらい大人気の留学生もいる。そのまま子どもと一緒に家に帰り、外国語でのコミュニケーションが始まる。

 内容は、外国語を使った学習から、クイズ、ゲーム、スポーツ、音楽、工作、絵本、お菓子作りまで、留学生の得意分野によっても様々だ。子ども向けの英語教師を経験したことがある留学生もいる。子どものレベルに合わせて教え、子どもたちの学習意欲も自然と高まるように心がけているという。

プログラミングを教えることができる留学生もいる。子ども向けプログラミングソフトを使い、自分好みのアニメーションやゲームを作ることができるようサポートする。パソコン画面を覗きこむその姿は、興味津々だ。

 やがて子どもたちは外国語を使って留学生に質問するようになる。シェズモファミリーの目標は、こうした「遊んで学ぶ、グローバル教育」なのである。

 

自身の出産、異文化経験がヒントに

 今西さん自身は、大学入学を機に上京するまで、出身の岐阜県から出たことがなかった。大学在学中の交換留学をきっかけに、英語を使う仕事をしたいと思うようになった。新卒で大手レコード会社に入社。その後転職し、外資系企業で管理職を務めた。

 06年には長男を出産。家事の分担を巡り、夫と対立したこともあり、働く親たちを助けることができないか、と考えるようになった。また、「どんな風に育ってほしいか」と、教育面に興味を持つようになり、小さい頃から異文化や多様性に触れる必要があるのでは、とも思うようになった。仕事を通して、英語は上手に話せるのに、外国人とコミュニケーションを取ることが苦手な人に出会ってきたことも背景にある。

「悩んで立ち止まっている時間がもったいない。半歩でもいいから前に進もう」。自宅にホームステイの学生を受入れてみると、息子は自然に留学生と会話し、なつくようになった。

 ホームステイの経験をママ友に話すと、「うちでもやりたい」という声があったが、日本の住宅事情や、職を持つ家庭などでは現実的でない。「子供の送迎や、家でのシッティングを留学生がしてくれたら、グローバル教育としても、子育てサービスとしても価値があるのではないか」と、留学生によるシッターサービスを思いつき、起業した。

賛同する協力者も増え、既に利用者からは、「留学生のお姉さんと遊ぶために、英語に興味を持ち始めたようです」、「子どももすっかりなついて、大満足です!」などの声が寄せられている。自然に異文化や多様性に触れ、留学生と一緒に学べる場に魅力を感じる利用者が多いという。

 「chezmo」はフランス語の「chez monde」(英語で「at world」)を短くした造語だ。「世界で羽ばたいてほしい」という願いから名付けた。今後は、海外の絵本やポストカードが毎月届く通信教育サービス「chezmo world(シェズモワールド)」などを準備していく予定だ。

 今西さんは「子どもの時から無理なく異文化体験ができる場を少しずつ広げていきたい」という。挑戦はこれからも続く。

 

この記事は、2017年春学期「ニューズライティング入門」(朝日新聞提携講座、柏木友紀講師)において作成しました。

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