0912_Naoshima_Fukutake

早大院生、福武ベネッセ会長の「ジャーナリズム観」に迫る

 ベネッセコーポレーションの福武總一郎会長(63)が、2009年9月6日午前、直島福武美術館財団広木荘において、早稲田大学大学院政治学研究科ジャーナリズムコースの学生6人のインタビューに応じた。主なテーマは「ジャーナリズムについて」。福武会長は、ジャーナリズムの過去の不作為を厳しく指摘した上で今後への期待感を表明した。将来、メディア人を目指す学生にとっては刺激的なインタビューとなった。
(注) 直島福武美術館財団は、直島にある「地中美術館」を運営しており、福武会長は同財団理事長を務めている。ジャーナリズムコースの学生は広木荘に宿泊しながら2週間のインターンシップ活動をした。

このエントリーをはてなブックマークに追加
はてなブックマーク - 早大院生、福武ベネッセ会長の「ジャーナリズム観」に迫る
Share on Facebook
Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Livedoor Clip

 

「ジャーナリズムは嘘を見抜けなかった」

 福武会長は「政治と国民をつなぐ唯一のものがジャーナリズム」と述べ、小泉元首相の政治改革がもたらした負の側面をジャーナリズムが厳しく監視できなかった事実を指摘した。

 「(今回の衆議院議員選挙で)国民は今のままではダメだという意思表示をしたのがその証拠です」

 また、アメリカのジョージ・ブッシュ元大統領によるイラク戦争についても「アメリカのジャーナリズムが、あの戦争が事実の捏造によって起こされたのだと国民に対して気づかせることができなかった」と話す。

 その上で、ジャーナリズムは思想や哲学に軸をおくのではなく「徹底的に大衆を軸に置くことが必要」だと述べた。

 

今後のジャーナリストに必要な資質

 今後のジャーナリストは、インターネット時代のジャーナリズムのあり方を勉強することが必要だと指摘した。

 「インターネット時代のジャーナリズム論というものがあってもいいはずだ。既成メディアがインターネットの力を認めないのは、自分たちが弱いということを認めることになるから。世界を一瞬でつなぐインターネットは今後更に力を持つことになる」

 また、さまざまな国のガバナンス(政治統治)について勉強する必要性も強調し、今のジャーナリズムが政府批判にとどまっている限界も指摘した。

 「ポピュリズムは反対を煽るだけ。ジャーナリズムは政治に対して常に『代替案』を持ち、政治が良くなる方向を指し示さねばならない。そのために、色々な国のガバナンスを勉強することが必要」

 

地域を良くするモデル作りを

 学生の「今後の(活動の)展望について」という質問に対し、福武会長は「地域を良くするためのモデル作り」だと答えた。

 「直島がアートで地域のお年寄りを活性化させたように、企業がきっかけを作ってあとは地域の人にがんばってもらう。そのことを通して世界から尊敬されるべき企業を目指す」

 福武会長は、直島を舞台とする「ベネッセアートサイト直島」というプロジェクトを提唱し、「ベネッセハウス」「地中美術館」「家プロジェクト」などの展開に取り組んできた。

 2009年8月には慶応大学と産学連合で電気自動車の研究開発を手がける新会社を設立するなど地球環境への取り組みは意欲的だ。趣味はヘリコプターの操縦で、直島に週に1回来るときは自ら操縦しているという。

 

 「良く生きる」という意味のベネッセ。福武会長の言葉には強い意志と、これからを担うジャーナリストの卵たちへの期待が感じられた。

j-logo-small.gif


※この記事は、09年夏の「直島・豊島インターンシップ(ベネッセ、直島福武美術館財団など協力)」で、瀬川至朗先生の指導のもとに作製しました。

合わせて読みたい

  1. 果てなきアスベスト問題(1)
  2. 女性と骨粗しょう症
  3. 現代の産婦人科が抱える問題
  4. 記者 上田真理子さんインタビュー
  5. 豊島 棚田再生に奮闘中