1102-menjyo

ウェブメディアをリードしたい

一色清・WEBRONZA編集長、朝日新聞編集委員

朝日新聞社が新しい試みに挑戦している。ウエブサイト「WEBRONZA」だ。著名なブロガーやジャーナリストたちが書いたニュース解説やオピニオンに加えて、ネット上の注目すべきオピニオン(意見、議論)をニュースごとにまとめる、いわばウェブ上での「オピニオン・解説まとめサイト」である。紙のメディアからウェブメディアへの転換が言われる中、WEBRONZAはどのように機能していくのだろうか。編集長を勤める一色清さんに聞いた。

このエントリーをはてなブックマークに追加
はてなブックマーク - ウェブメディアをリードしたい
Share on Facebook
Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Livedoor Clip

一色清さん略歴
1956年生まれ。経済部記者の後、雑誌「AERA」編集長、土曜朝刊別刷り「be」の編集長などを経て、2008年10月からテレビ朝日系「報道ステーション」のコメンテーター。

――WEBRONZAを始めたきっかけは何ですか。

  最近、新聞よりもウェブを情報源にする人が増えてきました。朝日新聞の社内でも「人々の情報源は紙のメディアからウェブメディアへどんどん移っていく」ということを言い出す人が増えてきて、新聞社として目を背けているわけにはいかない。一種の「実験」として始まったのがきっかけです。

――「実験」とは具体的にどういうことですか。

  朝日新聞社がウェブメディアに参入するのは『asahi.com』に続いて2つめです。しかし、今回はアサヒコムとは事情が違います。私はWEBRONZAは、これからのウェブメディア社会での勝負のための事前準備であり、例えて言えば「種」ようなものだと思っています。

  様々な問題に直面しながらWEBRONZAという「種」を育てていくという「実験」なんです。

――様々な問題とは。

  ウェブには様々な魅力があるのは間違いありません。まずは情報量の多さです。新聞や雑誌と違って行数や見出しに制約がありません。また、ウェブは参入障壁が低く少人数で運営ができるメリットがあります。したがって雑誌のように膨大なコスト・人員を動員する必要はありません。

  しかし、新聞社にとっては問題もあります。一つは販売店の問題。朝日新聞社には販売店が多く、ウェブを重視して新聞発行部数が減ってしまえば販売店からの批判は免れません。二つめは課金制度。無料のオピニオンサイトはすでにたくさんありますよね。それらと差別化するには、相当なネームバリューのある人の記事や目から鱗が落ちるようなオピニオンでなければ課金は成り立たないでしょう。

――どんな解決策を考えていますか。

  二つの問題のうち、特に課金問題はWEBRONZAを立ち上げる上で最大の課題でした。議論が頓挫しかけたとき、社内からある意見が出たんです。それは「すばやいニュース解説ならニーズ(需要)があるのではないか」というものでした。ネット上にはたくさんのオピニオンがあるけれども、本当に良質なニュース解説はあるだろうか。信頼性のある新聞社がニュース解説を通して多様な視点を提示すれば、お金を払う価値も生まれると考えました。

  しかし、やはりニュース解説だけでは難しい。それらのニュースに通じている人が、他の仕事を投げ打って解説を書いてくれなければ成り立ちにくいわけです。だからニュース解説とオピニオンの両方を載せればある程度中身のあるサイトになるのではないか、そういう考えから今のWEBRONZAの形が出来上がりました。

――そもそも、一色さんが編集長を引き受けたのはなぜでしょうか。

  去年の秋、突然編集局長室に呼ばれて幹部から「有料のウェブサイトを立ち上げたいんだが、編集長になってもらえませんか」と言われたんです。「報道ステーション」のコメンテーターをはじめ仕事が多くて悩みましたが、1年以上経って慣れてきたので余力があったんですね。

  また、何よりもそういう新しいことをやるのは悪いことではない、人に頼まれることは光栄なことだと考えていました。あとはこれまで新聞を20年間・雑誌を10年間・テレビを1年間経験してきて、新しいメディアに手をつけてみたいという思いもあって受けようと思いましたね。

――これからWEBRONZAをどのようなものにしていきたいですか。

  今はまったく手探り状態で、最終的な着地点がまだ見出されていないのが現実です。紙とウェブの転換期だと言われる現在、他の新聞社が電子版を開始したり、これからも新聞各社に大きな動きが予想されるでしょう。しかしながらそれがどの方向に動いていくのかは誰もわかりません。

  ただ、一つだけわかっていることがあります。どちらの方向に向いたとしても、自分たちが一次情報を集め、分析し、整理し、価値付けし、提示する立場にいなければならないということです。この立場にいることで政府の監視役となったり、ウラを取ることによって本当の情報を伝える役割を担うことができるはずです。WEBRONZAはこれからそのような立場でウェブメディアをリードしていけるようになりたいですね。

――WEBRONZAを始めたきっかけは何ですか。

最近、新聞よりもウェブを情報源にする人が増えてきました。朝日新聞の社内でも「人々の情報源は紙のメディアからウェブメディアへどんどん移っていく」ということを言い出す人が増えてきて、新聞社として目を背けているわけにはいかない。一種の「実験」として始まったのがきっかけです。――「実験」とは具体的にどういうことですか。 朝日新聞社がウェブメディアに参入するのは『asahi.com』に続いて2つめです。しかし、今回はアサヒコムとは事情が違います。私はWEBRONZAは、これからのウェブメディア社会での勝負のための事前準備であり、例えて言えば「種」ようなものだと思っています。様々な問題に直面しながらWEBRONZAという「種」を育てていくという「実験」なんです。

――様々な問題とは。

ウェブには様々な魅力があるのは間違いありません。まずは情報量の多さです。新聞や雑誌と違って行数や見出しに制約がありません。また、ウェブは参入障壁が低く少人数で運営ができるメリットがあります。したがって雑誌のように膨大なコスト・人員を動員する必要はありません。しかし、新聞社にとっては問題もあります。一つは販売店の問題。朝日新聞社には販売店が多く、ウェブを重視して新聞発行部数が減ってしまえば販売店からの批判は免れません。二つめは課金制度。無料のオピニオンサイトはすでにたくさんありますよね。それらと差別化するには、相当なネームバリューのある人の記事や目から鱗が落ちるようなオピニオンでなければ課金は成り立たないでしょう。――どんな解決策を考えていますか。二つの問題のうち、特に課金問題はWEBRONZAを立ち上げる上で最大の課題でした。議論が頓挫しかけたとき、社内からある意見が出たんです。それは「すばやいニュース解説ならニーズ(需要)があるのではないか」というものでした。ネット上にはたくさんのオピニオンがあるけれども、本当に良質なニュース解説はあるだろうか。信頼性のある新聞社がニュース解説を通して多様な視点を提示すれば、お金を払う価値も生まれると考えました。しかしやはりニュース解説だけでは難しい。それらのニュースに通じている人が、他の仕事を投げ打って解説を書いてくれなければ成り立ちにくいわけです。だからニュース解説とオピニオンの両方を載せればある程度中身のあるサイトになるのではないか、そういう考えから今のWEBRONZAの形が出来上がりました。――そもそも、一色さんが編集長を引き受けたのはなぜでしょうか。去年の秋、突然編集局長室に呼ばれて幹部から「有料のウェブサイトを立ち上げたいんだが、編集長になってもらえませんか」と言われたんです。「報道ステーション」のコメンテーターをはじめ仕事が多くて悩みましたが、1年以上経って慣れてきたので余力があったんですね。また、何よりもそういう新しいことをやるのは悪いことではない、人に頼まれることは光栄なことだと考えていました。あとはこれまで新聞を20年間・雑誌を10年間・テレビを1年間経験してきて、新しいメディアに手をつけてみたいという思いもあって受けようと思いましたね

――これからWEBRONZAをどのようなものにしていきたいですか。

今はまったく手探り状態で、最終的な着地点がまだ見出されていないのが現実です。紙とウェブの転換期だと言われる現在、他の新聞社が電子版を開始したり、これからも新聞各社に大きな動きが予想されるでしょう。しかしながらそれがどの方向に動いていくのかは誰もわかりません。ただ、一つだけわかっていることがあります。どちらの方向に向いたとしても、自分たちが一次情報を集め、分析し、整理し、価値付けし、提示する立場にいなければならないということです。この立場にいることで政府の監視役となったり、ウラを取ることによって本当の情報を伝える役割を担うことができるはずです。WEBRONZAはこれからそのような立場でウェブメディアをリードしていけるようになりたいですね。

{#j-school_logo}

※この記事は、2010年度J-Schoolの授業「ニューズルームE」において作成しました。

合わせて読みたい

  1. 精液中のHIVを完全除去
  2. 弁護士・四宮啓さんインタビュー
  3. 統合失調症患者に憩いの場を
  4. 「日本の伝統文化の素晴らしさを知って」/ 江戸小紋一筋150年、東京染物がたり博物館
  5. 野宿者や派遣労働者とともに