2010年6月24日
执笔・撮影:伊贺幸太
統合失調症患者に憩いの場を
埼玉県ふじみ野市のごく普通の民家に、統合失調症を抱える人々のための交流の場がある。患者の家族会「ウィズネット」を運営母体とする精神障がい者施設、「ライトハウス」だ。4年前に立ち上げた一人が、施設長の伊藤久子さん(65)。目指すのは、自立を目指す利用者のより所となる「灯台」だ。写真右は施設長の伊藤久子さん、左は副施設長の西山しめ子さん。
2010年6月24日
执笔・撮影:伊贺幸太
埼玉県ふじみ野市のごく普通の民家に、統合失調症を抱える人々のための交流の場がある。患者の家族会「ウィズネット」を運営母体とする精神障がい者施設、「ライトハウス」だ。4年前に立ち上げた一人が、施設長の伊藤久子さん(65)。目指すのは、自立を目指す利用者のより所となる「灯台」だ。写真右は施設長の伊藤久子さん、左は副施設長の西山しめ子さん。
「できるなら、そっと隠しておきたい」。統合失調症は、幻覚や集中力の欠如などを招く病気だ。家族にすら理解しにくく、偏見を持っている場合も多い。認めたくない気持ちも強い。「このままではいけない。一歩踏み出す場を私達で作ろう」。伊藤さんたちが家族会で呼びかけると、多くの人の共感と賛同を呼んだ。
「小さな施設で、地域と密着することが大切」。利用者が通いやすい場所に民家を借り、近隣住民の理解を得ることを目指した。だが、大家の反対に苦しんだ。やっと、借りられる民家を見つけるまで、1年を費やした。
現在、「ライトハウス」では、5人のスタッフ(常勤1人、家族スタッフ4人)が16人の登録メンバーの支援に当たっている。「まずは、衣食住を自力で行えること、人間関係が作れること」と伊藤さん。料理やパソコン、園芸が得意な女性スタッフが、母親の目線で教える。時には、ゲームをしたり、映画を見て一緒に泣き笑いしたりする。
施設では、クロネコメール便配達などの仕事も請け負っている。「あなたならできる。失敗してもスタッフがいるから」。スタッフに背中を押されて、メンバーは初めの一歩を踏んだ。最初は地図を見るのも大変だった人が、少しずつ自信を持ち始め、配達を引き受けるまでになった。今度は、その人が先輩として新たなメンバーに教えていく。「メンバー同士のいたわりや成長を見ることがうれしい」。施設長として、メンバーの潜在能力を引き出すことに力を注ぐ。
「世の中は、1+1=2と計算通りになることを善しとするが、1+1=3に4にも、時には0にもなる。そんな生き方があってもいい」
障がい者施設の中には、事業を通じて利益や収入を上げることを目指す動きもあるが、伊藤さんは首をかしげる。目指すのは、生きる楽しさがわかる施設だ。
施設を「卒業」して職に就いたメンバーもいるし、就労へ向けて、「ライトハウス」に通いながら作業所で働く人もいる。だが、一度卒業したら終わりではない。
「いつでも、具合が悪くなったら戻っておいで」
【参考ページ】
ウィズネット公式HP: http://music.geocities.jp/natugakureba4677/index.htmlライトハウス公式HP: http://music.geocities.jp/natugakureba4677/light-house.html