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「ありがとう」が聞きたくて 音楽専門学校生 関井うららさん

関井うららさんは東北の4年制大学を卒業後、東京に出てきて音楽専門学校に進んだ。自ら学ぶ一方、東京都内の中学・高等学校をまわって吹奏楽指導に力を入れている。彼女の吹奏楽指導に対する情熱の源は何か。

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【略歴】
関井うらら(24)
  宮城県出身。東北学院大学卒業後、尚美ミュージックカレッジ専門学校でフルートを専攻。吹奏楽指導者育成コースにも所属している。演奏者としてフルートダンスユニット「Baby’s Breath」やフルート、バイオリンデュオ「Tiara」などでも活動。

――吹奏楽指導に関心をもちはじめたきっかけは何ですか。

  高校生の時に学生指揮者になったのがきっかけです。音楽室にいっても、みんな楽器を吹かずにお菓子を食べているような部活だったのですが、顧問の先生と相談しながら練習メニューや時間を変えました。そしたら少しずつ音楽が変わっていくのを身にしみて感じたんです。前の年の音楽と今年の音楽が明らかに違いました。その時、吹奏楽指導の楽しさを実感しました。「絶対にこのバンドの土台を私がつくりあげる」という使命感に満ちてましたから。

――高校を卒業して音楽大学に進学をしなかったのはなぜですか。

  高校生の時から音大進学の準備はしていました。ですが、音大に進んでしまったら音楽しか道がなく、やりたいことが変わった時にどうしようもないので、普通の大学に進学しました。大学で勉強してそれから音楽の道を考えても遅くないのでは、と思ったんです。

――なぜその大学に進学することを目指したのですか。

  尊敬する指揮者がその大学の吹奏楽部で振っていたからです。中学生の時からずっと入りたいと思っていました。学部は、教育学や心理学に関心があったので教養学部を選びました。

――大学での4年間はどうでしたか。

  中学生の頃から憧れていた大学の吹奏楽で活動したことで、音楽をやりたい気持ちを再確認することができました。勉強面でも、教員免許を取得しました。

――卒業して、音楽の道を目指したんですね。

  大学3年生のころ、普通の仕事はしたくないと思うようになりました。子どもに音楽を教えたり、音楽を通して人に喜びや感動を伝えたいと思ったんです。それで音楽を学びに東京へ行こうと決意しました。 

――音楽専門学校に入学した理由を教えてください。

  一つめの理由は、音楽以外の勉強はしなくていいと思ったんです。大学で一般教養は十分学んできましたし、専門学校だったら音楽の授業しかないので、とことん集中できると思いました。二つめの理由は、この学校には吹奏楽指導者育成コースがあって、尊敬している吹奏楽指導者の方々が直接指導してくださる授業に魅力を感じました。

――実際に吹奏楽指導活動をやっていてどのように感じていますか。

  子供たちの成長をみるのが本当に楽しいです。その子がちょっとでもうまくなったりとか、吹奏楽がもっと好きになったりとか、そういった姿をみるのがとても楽しいですね。子どもって素直なので、思ったことはそのまま顔にでるんです。その分、わかったときの喜びかたとか楽しそうな顔をみると、もっと貢献したいと思います。

――指導の際に工夫していることは何ですか。

  大学で教育学や心理学を学んだ経験を生かしています。具体的には、生徒一人ひとりの性格に合わせた教え方をするようにしていますね。厳しく指導したほうが良い子や、少しずつ段階的に課題を与えた方が良い子など、子供たちに合わせて指導をするようにしています。

――将来はどのような形で吹奏楽指導に携わりたいと考えていますか。

  外部指導講師として携わりたいです。学校の教員とは違い、さまざまな学校へ行くことが出来ます。顧問の力だけでは音楽づくりができないという学校がいくつもあるので、ひとつでも多くの学校で指導して、音楽を良くしていければと思います。 

――なぜ学校の教員として吹奏楽指導にかかわろうとは思わなかったのでしょうか。

  フルート演奏の活動も続けていきたいからです。教員になると、どうしても楽器を吹く時間がなくなってしまいますから。フルート奏者としてどこまで腕が通じるか試したい。教員はその後でも遅くないと思いました。音楽指導と演奏活動の両方が出来るのは外部指導講師しかないと思っています。

――そこまで「吹奏楽指導に携わりたい」と思う原動力は何でしょうか。

  「ありがとう」の言葉ですね。ありがとうって日常的にもたくさん使うことばですが、指導したあとに子供たちが言ってくれるありがとうは本当に心から言ってくれているとわかります。「ありがとう」のためにもっと教えよう。もっと言ってもらえるように頑張ろう。そう思うことが、原動力になっています。

 

(取材を終えて)   関井さんのレッスン風景を見学した。指導は厳しい。生徒ができるまで何度もやらせる。決して諦めない。生徒も負け地と懸命についていく。でも、息抜きも忘れない。お互いの爪を見せ合って「先生の爪可愛いね!」と楽しげに生徒はしゃべっていた。   ふと自分も高校、大学時代、吹奏楽に夢中になっていたことを思い出した。「また楽器を吹きたい!」と思いつつもしばらく勉強に専念しようと思う。

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※この記事は、2010年度J-Schoolの授業「ニューズルームE」において作成しました。

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