2010年7月27日
执笔・撮影:尼寺孝彰
「いつでも気軽に立ち寄って」人気のゆるふわルームシェア・1LDKに学生8人
単身者同士が一緒に暮らす「ルームシェア」が、若者の間で急速に広がっている。早稲田駅から徒歩1分、閑静な住宅街にある4階建てのアパート「いなほハウス」もその1つ。1階の1LDK(42平方メートル)で、男子学生8人が共同生活を営んでいる。
2010年7月27日
执笔・撮影:尼寺孝彰
単身者同士が一緒に暮らす「ルームシェア」が、若者の間で急速に広がっている。早稲田駅から徒歩1分、閑静な住宅街にある4階建てのアパート「いなほハウス」もその1つ。1階の1LDK(42平方メートル)で、男子学生8人が共同生活を営んでいる。
鍵もドアも開けっ放しの玄関に入ると、あふれんばかりの靴が出迎えてくれた。部屋に上がると、パソコンに向かう人、本を読む人、寝ている人、料理を作っている人、シャワーを浴びる人など、自由に過ごしている。住人が半分、残りの半分は「遊びに来た」学生たちだ。
「まあまあ、座って」と促すのは、週に2、3日出入りする明治大学4年の橋本吉佳さん(22)。現在は留学生寮のアシスタントで忙しく、訪れる回数は減っているというが、橋本さんの他にも多くの学生が立ち寄る。
ルームシェアは2009年7月、早稲田大学5年の高野淳さん(22)と東京大学4年の中川玄さん(21)の2人で始めた。高野さんは以前、早稲田の近くの友人宅に出入りしていた。友人宅はいろんな学生が寝泊まりするたまり場になっていて、中川さんとはそこを通じて知り合った。友人は、上京した父親と一緒に暮らすため引っ越してしまう。そこで、中川さんと「2人で住もう、そこをいろんな人が来る場所にしよう」と決めた。
やがて、「同居していた彼女に振られて追い出された」「一人で就職活動するのが嫌になった」といった人が集まってきた。
「いつもオープン」「300円で泊まれる」という理由で、地方の就職活動生にも人気だ。「家に帰ると、知らない人が1人でくつろいでいたこともある」。そう語るのは、住人の1人であるAさん(24)だ。就職活動で京都から来た大学生が、友人に聞いて訪れたのだ。訪れた学生は、壁に名刺を張っていく。名刺の数は1年も経たないうちに150を超えた。
家賃は月12万円で、8人中3人が4万円ずつ出している。他の4人は、実家に帰るなど週に1、2日泊まる程度なので数千円だ。そのお金は、座イスやプロジェクターなど共有物の購入に充てられる。残る1人は、家賃の代わりにお米を納めている。
困っていることは、「6人以上泊まると、狭くてちゃんと眠れないこと」と高野さんは笑う。ふとんも、セミダブル2組とシングル1組しかない。でも「本をシェアできるし、趣味の将棋もみんなと一緒にできるのは楽しい」。中川さんも「実家にいた頃も、ずっとスカイプやメールで人と連絡を取っていた。人と話すことが好きで、趣味みたいなもの」と、満喫している。
現在若者に主流のワンルームマンションは、1976年に早稲田で初めて誕生し、80年代にブームになった。ライフコース研究が専門の大久保孝治・早稲田大文学学術院教授は「過去の若者は個室を求めた。しかし、シェアハウスをしている若者はマジックミラーのように、他の人がいても視線を『ろ過』できるため、個室がないことも気にしなくなっている」と分析する。
今はインターネットで簡単にルームシェアの物件も相手も見つかる時代。海外の若者には当たり前のルームシェアが、日本でも当たり前になる可能性は十分にある。「一人暮らし」の時代が終わりを告げる日も、近いのかもしれない。
【参考ページ】
いなほハウス on Twitter : https://twitter.com/inaho_house
<注>
・2021年4月19日 ご本人からの要望にもとづき、住人の1人を仮名にしました。
※この記事は、10年度J-school授業「ニューズルームD(朝日新聞提携講座)」(林美子講師)において作成しました。