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大臣記者会見、だれが主催?省庁と記者クラブ、7閣僚で見解不一致J-School院生の調査で判明

鳩山政権の閣僚18人のうち7人の記者会見について、だれが主催者なのか、省庁と記者クラブで見解が一致していないことが早稲田大学ジャーナリズム大学院「調査報道の方法」取材班の調べでわかった。

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 鳩山政権の閣僚18人のうち7人の記者会見について、だれが主催者なのか、省庁と記者クラブで見解が一致していないことが早稲田大学ジャーナリズム大学院「調査報道の方法」取材班の調べでわかった。
 特に警察庁と消費者庁はそれぞれの担当閣僚の記者会見について「大臣が主催している」と主張し、「記者クラブの主催だ」という記者クラブの見解と真っ向から食い違っている。取材班では閣僚記者会見への参加を試みたが、18閣僚のうち13人について「報道の対価として収入を得ている職業報道人にあたらない」などの理由で拒否された。
 取材班記者の参加が認められた5閣僚については、いずれも記者クラブが主催を主張する記者会見だった。  

「Spork!」記者が会見参加を申請

 早稲田大学大学院政治学研究科のウェブマガジン「Spork!」記者(院生)が各省庁の報道担当窓口、ならびに各記者クラブ加盟社のうち当番制で会見のとりまとめを行う幹事社に大臣記者会見への参加を要請。それに対する回答を調査するなかで明らかになった。

 見解が一致しなかったのは、中井国家公安委員長、福島消費者行政担当相のほか、鳩山首相、平野官房長官、菅副総理、千葉法相、岡田外相の会見。そのうち外相を除く6会見について、各担当記者クラブが「自らの単独主催」を主張している。これに対して、国家公安委員長と消費者行政担当相の記者会見については警察庁と消費者庁がそれぞれ「大臣主催」を主張して記者クラブの見解を真っ向から否定。菅副総理と千葉法相の会見については内閣府と法務省が「記者クラブとの共催」と説明。首相と官房長官の記者会見については総理官邸報道室が「定まっていない」と答えた。

 外相会見については、外務省が「外務大臣の主催であって、記者クラブの主催ではない」と答えたが、記者クラブ(霞クラブ)側は「定まっていない」と答えている。見解が一致しないことについて、法務省は、「会見の運営には省も当たっている。その働きをどう捉えるかで主催者の捉え方も異なってくるのだろう」と説明、おかしいことではないという考えを示した。

表:大臣記者会見の主催・公開状況の調査比較

参加を認めない省庁・記者クラブの見解

 主催をめぐり明確な見解の食い違いが見られた2閣僚のうち、中井国家公安委員長の記者会見については参加の可否に影響が及んだ。記者クラブ(警察庁記者クラブ)側は「記者ならばフリー」であるとして、会見参加を認める姿勢を示したのに対し、警察庁が「記者クラブがなんと言おうと、誰でも入れるというわけではない」と反論。最終的には会見が開かれる庁内の管理権を持つ警察庁の判断により「Spork!」記者の参加が認められなかった。

 一方、記者クラブが会見を主催していると答えた10省庁は、クラブ外からの参加要請について判断を記者クラブに一任している。会見参加を拒否された13閣僚の記者会見のうち、4閣僚については省庁が判断を下した。そのうち外務省は、日本新聞協会や民間放送連盟、日本インターネット報道協会など6団体の加盟社に所属、もしくはそれらの媒体に定期的に記事を提供している記者にのみ会見参加を認めるガイドラインを昨年9月に作成しており、そのいずれの項目にも「Spork!」記者が該当しないことを、参加拒否の理由として挙げた。

 このガイドラインに似た基準が今年1月から総務相会見にも導入されているが、こちらは外務省と異なり、記者クラブの判断で「Spork!」記者のオブザーバー参加が認められた。

 

「プロのジャーナリスト」以外は参加不可

 また記者クラブ主催と大臣主催に分けて2本だてで記者会見を開いている亀井金融担当相について、金融庁の広報室が、大臣主催会見への参加を求める記者が過去に書いた記事やそれが掲載された媒体をチェックしたうえで、会見に参加できる「プロのジャーナリスト」か否かを判断していることが明らかとなった。

 9閣僚の会見については記者クラブが参加を拒否した。「報道の対価として収入を得ている職業報道人の取材」(法曹記者クラブ)、「広く公に対して報道し,影響力をもつマスメディアの取材」(経済産業省記者クラブ)、「法人の従業員であること」(農水クラブ)などの理由が挙げられた。そのほか、クラブ会員ではないため(内閣記者会)、外部からの参加について協議中であるため(防衛記者会)といった回答もあった。

 また文部科学省記者クラブは、参加を拒否する理由として、省の広報室が会見映像をインターネット動画サイト「YouTube」に投稿していることを挙げた。なお「YouTube」には外相、農水相の会見映像も投稿されている。

 

参加を認めた記者クラブの見解

 「Spork!」記者が参加を認められたのは、総務相、財務相、厚労相、国土交通相、消費者行政担当相の5閣僚の記者会見。いずれも記者クラブが主催を主張している。そのうち消費者行政担当相を除いた4閣僚の会見は、「質問してはならない」と条件をつけられたうえでのオブザーバー参加にとどまった。

 もっとも国土交通相会見は、申し込みの際はオブザーバー参加となっていたものの、実際にはチェックがなく質問可能な会見形式がとられていた。唯一事前に「質問が可能」と答えた消費者庁の記者クラブ(消費者研究会)は、「記者会見を独占することは時代遅れ」との見解を示した。

 
※この記事は、09年後期のJ-School講義「調査報道の方法」において、瀬川至朗先生の指導のもとに作製しました。

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