市民公開講座「がん治療の今」−日本癌学会が主催

最先端のがん治療方法についてがん専門医やがん研究者が語る市民公開講座「がん治療の今」(日本癌学会主催)が10月6日、横浜市のパシフィコ横浜で開催された。胃がん、大腸がん、肺がん、乳がん、血液がんについての新たな治療方法や、最新の放射線治療についての講演があり、聴衆から寄せられた質問にも専門医が答えるパネルディスカッションが行なわれた。

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 日本がん学会の市民公開講座は2003年に始まり、今回が10回目。専門医の話を直接聞ける機会であり、約1000席の会場は聴衆で埋め尽くされた。  

 胃がんと大腸がんについて説明した山口俊晴氏(財団法人癌研究会有明病院)は、腹腔鏡手術は、お腹に小さな穴を開けて小さな器具を入れ幹部を切除する。開腹手術に比べ、短期間で回復するが、熟練した技術が必要な方法だ。手術を受ける前に、その病院で何例実施しているかをチェックすべきとアドバイスした。  

 徳田裕氏(東海大学)は新しい乳がん治療薬の話をした。乳がんが肺に転移した女性患者が薬の投与で10年後も存命である例を紹介。たちの悪いタイプの乳がんに効果がある分子標的薬トラスツズマブ(ハーセプチン(R))を抗がん剤と一緒に用いることで効果があったという。また、新たに開発されているラパチニブ(商品名タイカーブ(R))が進行性や再発性の乳がんに有用との心強いニュースもあった。  

 講師からは、各種がん学会が発行している患者用ガイドラインの紹介もあった。たくさんある治療法のなかで、がんの進行度がどの程度ならどの治療が有用なのか、がんにつけ込んだ高額な「健康食品」の類は本当に有効なのか——などを知るのに生かしてほしいと山口氏は紹介した。  

 多忙を極める担当医にじっくり相談できない患者さんのために「がん無料相談」(日本対がん協会)のシステムがあることも紹介された。一人30分の面談時間をとり、国立がんセンターのOB医師などが相談に乗る。 看護師やソーシャルワーカーが電話で相談にのる「がん相談ホットライン」もある。  

 パネルディスカッションでは、聴衆から「効率よくセカンドオピニオンを得るためにどのような情報を医師からもらって行けば良いか」との質問があった。  

 これに対し山口氏は「上手に利用すれば大変良いシステムであるが、担当の医師からの説明をほとんど受けずにセカンドオピニオンを受けに来る患者さんがいる。このようなセカンドオピニオンの受け方は、がん診療の現場をさらに忙しくするだけで賢い方法ではない。セカンドオピニオンの前に担当医とよく話を聞けるように工夫してみて欲しい」と助言した。

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