産婦人科の骨粗鬆症治療

 お産のイメージが強い産婦人科だが、近年、中高年女性を対象とする更年期医療が大きな柱となってきた。今年の日本産科婦人科学会で「骨粗鬆(そしょう)症治療薬の選択」というテーマで講演した新潟市民病院の倉林工・産婦人科部長は、「更年期女性の健康管理にとって骨粗鬆症は重点疾患の一つ」と強調した。産婦人科医による骨粗鬆症への取り組みについて報告する。

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 「15年ほど前から、産婦人科において更年期医療が一つの大きな柱となってきた」。講演後のインタビューで倉林さんはそう指摘した。 産婦人科は、お産や女性特有のがんだけでなく、生涯にわたって女性の健康維持に関わる診療科に変化しているという。更年期障害の主な原因は、閉経前後に女性ホルモンのエストロゲンが減少することにある。女性の骨量減少もエストロゲン低下が大きな引き金となる。このため骨粗鬆症が婦人科でも診察されるようになった。

■治療薬の選択

 それでは、いくつもの種類がある骨粗鬆症治療薬をどう使い分けるのか。代表的な治療薬は現在2種類ある。女性の骨の状態と年齢で、使う薬も違ってくる。 すでに骨折したことがある患者で、治療薬に強い骨折予防効果を期待する場合は、強力な骨吸収抑制剤であるビスフォスフォネートを用いる。主として骨折しやすい70、80歳代の高齢患者に使われる。 一方、まだ骨折したことがなく、骨以外にも広く健康維持の効果を期待する場合は、ラロキシフェンという骨吸収抑制剤を用いる。心臓病リスクやコレステロールの低下、乳がんの抑制などにも効果があるという。40、50歳代の更年期の女性は、骨粗鬆症以外の生活習慣病についても注意すべき時期にあり、ラロキシフェンの使用が薦められる。

■閉経前から対策を

 しかし、「骨粗鬆症対策は閉経後から、では遅すぎる」と倉林さんは言う。講演では、お産の後の母親に骨密度検診を実施すると、5、10年後の骨量減少を早期にスクリーニングでき、ライフスタイルの改善により骨量回復にも効果がある可能性がデータで示された。倉林さんは「この時期の骨密度検診が、母親に積極的なカルシウム摂取を動機付け、また、生まれてきた子どもの食生活をも教育する効果がある」と話す。若いうちから女性が将来の健康を見据えた対策を取る。産婦人科医が目指す新しい医療のかたちといえそうだ。

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