日本地惑連合の過去と未来

 地球や惑星を研究分野とする各種学会が集まってできた「日本地球惑星科学連合」が、2006年5月で設立1周年を迎えた。なぜ連合をつくる必要があったのか、今後の課題は——。連合代表の浜野洋三・東京大学教授に話を聞いた。

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きっかけは危機感

 連合発足の第一歩は1990年にさかのぼる。 地球惑星科学と一口に言っても、気象、地震、火山、地球磁場など、実にさまざまな現象を取り扱い、それぞれに専門学会が存在する。以前は各学会がばらばらで研究発表会を開催してきた。しかし、手法や対象が異なっても、大きく見ると地球と惑星の科学に集約できる。それでは「同じ時期に同じ場所でやりましょう」と、90年に地震学会や火山学会など5つほどの学会が合同で大会を開いた。合同大会はその後、参加学会が増え、幕張メッセ国際会議場など大きな施設で開かれるようになった。この流れを受け、05年5月、連合が生まれた。 連合設立について、浜野さんは「危機感がきっかけになった」と打ち明ける。地球惑星科学の分野は、高校では「地学」として学ぶ。しかし、理科離れの中でも地学離れはとくに深刻だ。高校地学の履修率の低さは改善する兆しがなく、現在地学を開講している高校は3割程度という。 研究発表会は合同で開くようになったが、対外的な活動などは、依然として各学会が個別に動いてきた。これでは対外的な発言力を持ちにくい。連合設立の背景には、従来のままでは、この分野の研究活動が先細るという強い不安があったという。  

 連合は、設立後すぐに、高校の理科科目「教養理科(仮名)」の創設を提言した。教養理科は、全ての高校生を対象に、宇宙誕生から環境問題まで、「地球人」として身に付けてほしい基礎的な項目をまとめたものだ。今回の提案は、文部科学省の方針と合致し、タイミングもよかった。連合自体、06年5月現在、加盟が43学会に増えた。 設立の意味は大きかったが、課題も見えてきた。その1つが他分野の理科との連携だ。教養理科に対しては、物理の研究者が「基礎的な物理学を教えるべきだ」と主張し、意見が一致していない。 浜野さんは「連合内はまとまってきたが、他の分野と連携して出さなければ意味がない。これからは物理、化学、生物の協力が必要」と指摘する。 連合の模索はこれからも続く。

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