深刻化する「地学離れ」 解決策は?

熊 巧迪

 「理科離れ」が叫ばれる中で、とくに深刻なのが「地学」の分野だ。(2006年)5月に千葉市で開かれた日本地球惑星科学連合大会で、浜野洋三・同連合代表(東京大学教授)に「地学離れ」の現状を聞いた。

このエントリーをはてなブックマークに追加
はてなブックマーク - 深刻化する「地学離れ」 解決策は?
Share on Facebook
Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Livedoor Clip

日本地球惑星科学連合・浜野代表に聞く

 「地球科学の分野が先細りして研究者がいなくなる。危機感はほんとうにあります」  浜野さんは苦笑いを浮かべてこう語った。日本地球惑星科学連合は、地球物理学、地質学、鉱物学、地理学などの地球惑星科学関連25の学協会により2005年に設立された。現在は43の学協会が加盟している。設立の背景のひとつには、「地学離れ」への危機意識があったと言う。 高校地学の教科書採択数で見ると、1963年からの教育制度下では高校生全体の60%が地学を選択していた。ところが、73年からの制度下では40%に下がり、以降は10%をわずかに上回る程度と低迷。2005年はついに10%を切った。地学を選ぶ高校生が減れば、大学で地球科学を志す人は当然少なくなる。分野全体の衰退につながりかねない。

 こうした「地学離れ」の要因にあげられるのが、受験制度の問題や教員の不足などだ。大学入試センター試験では、物理と地学が時間割の同じ枠にあるため、この2科目を併願できない。また、地学の教員が一人もいない県もある。「他の科目の先生が地学を兼ねるか、非常勤教師が教えるしかない。だが、選択する高校生があまりに少ないので、そうしたことを考えること自体、必要なくなってきました」と浜野さんは嘆く。  

 現状の対策として、日本地球惑星科学連合は2005年7月、高校必修科目「教養理科」の新設を提言した。同科目の位置づけは「物理・化学・生物・地学を学ぶための基礎としての性格」(同連合)。また目的は「時間的・空間的広がりの中における人類の位置付けを考えることができる人になること」(浜野さん)。項目には「地球の内部構造」や「プレートテクトニクス」などが見られ「地学色」が強いものの、物理・化学・生物・地学を横断した内容になっている。浜野さんは「高校生がせめて教養理科を学んでくれれば、地学を選択しなくてもいいと思っている教育関係者もいる」と話す。「教養理科」の提案には、「地学」という教科に固執するより、他教科との共同歩調を模索しながら、その中で「地学」の存在を示そうとする、いわば“現実路線”の思惑があるようだ。

合わせて読みたい

  1. Web2.0時代のジャーナリズム
  2. JAXAが目指す有人宇宙開発
  3. 果てなきアスベスト問題(2)
  4. サントリーホールで遊ぼう!
  5. 果てなきアスベスト問題(1)