『地球人』として地学を学んで

 地球惑星科学関連の43の学会が加盟する日本地球惑星科学連合は、高等学校1年生の必修科目案として「教養理科(仮称)」を文部科学省に提案している。今年5月に開かれた同連合の第一回大会の会場で、浜野洋三・同連合代表(東京大学教授)は、「地学離れ」に対する連合の見解や試みについて語った。

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 「地学は『地球人』に必要な教養として学ばれるべきだ」。理科離れの中でも特に深刻な高校生の地学離れを受けて、浜野さんはこう強調する。「教養理科」の提言は、地球惑星科学分野の研究者が減り、分野が先細る可能性に危機感を抱く連合メンバーのこうした考えに基づいている。 連合加盟学会の研究分野は、気象学、資源地質学、地震学など、地球に生きるものにとって身近な学問から、惑星科学など、宇宙の一部として地球を捉える学問まで幅広い。「アプローチの仕方や手法は学会によって異なるが、扱う対象は同じ地球だ」と浜野さんは連合の特徴について話す。こうした学会の相互理解や意見集約を通して、地球惑星科学分野の危機を乗り切ることが連合設立の目的の1つだ。  

 こうして設立された連合が提言する「教養理科」とはどんな科目なのか。「『地球人』として生きていく上で、地球の身近な現象を理解できること」を目的としており、その際に必要な科学的教養を総括した科目のようだ。高校卒業後の進路が文系か、理系か、就職かにかかわらず、全員に必修とすべき科目だという。この科目で基本的な科学の知識を身につけた上で、物理・化学・生物・地学を選択履修することになる。  

 現在、選択科目としての地学を履修する高校生はかなり少ない。大学受験の仕組みが大きな障壁となっている。まず、大学入試センター試験では、物理と地学を組み合わせて受験することはできない。また、一部の学部・学科を除くと、個別の入試科目として地学を設定している大学は少ないという。連合は、こうした障壁をなくし、地学を高校生が履修しやすい状況を作るべきだと主張している。

■地球惑星科学分野の窓口として■

43の学会を横につないだ大規模な連携組織である日本地球惑星科学連合にとっては、「対外的な窓口組織」となることも大きな設立目的だ。浜野さんは「地球惑星科学分野が一体となって外部へ意見を発し、また外部からの意見を受けられるように対応しなければならない。そういった問題の1つが教育問題だ」と語る。 「一般市民を対象とした積極的な活動を通して、人々に地球惑星科学の魅力を感じてもらう。そして、一般市民の関心の強さを政府にアピールしていきたい」と浜野さんは意気込んでいた。

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