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旧正月に始まる鉄道チケットの実名購入制度

お正月と聞けば日本人は、初詣やおせち料理と言った楽しい行事とともに、鬱陶しい帰省ラッシュのことも思い出すだろう。しかし、中国の旧正月における帰省ラッシュは、日本の比では無い。毎年、深刻な帰省ラッシュに悩まされている中国では、今年から鉄道チケットを実名で購入する制度を試行することになった。

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旧正月の帰省ラッシュ

 いよいよ2010年の旧正月がやってきた。中国人にとっての一大イベントである旧正月の帰省ラッシュに対し、中国の鉄道を管理する汽車運営総局は、鉄道チケットを実名で購入する制度を今年から試行しようとしている。

 毎年、中国では旧正月になると、日本の正月にあたる「春節」を実家で過ごすために、すべての出稼ぎ労働者や学生たちが帰省する。当然の成り行きとして帰省ラッシュが起きるわけだが、その激しさは、もはや大きな社会問題となっている。今や春節と聞けば、中国人の頭にはまず「チケットの購入難」や「帰宅難」という言葉が浮かんでくるに違いない。

 旧正月が近づくと、10日前にはもうチケットは予約でいっぱいになる。さらに経験のある人は、大体一ヶ月前から予約を始める。ところが一人でチケットを何枚買ってもかまわないので、ダフ屋は沢山のチケットを確保しておき、旧正月に近づいたら旅客に転売するのだ。もともと50元(日本円で700円弱)のチケットが、10倍以上の高値で転売されることも、ざらにある。

 

実名制度は本当に有効か?

 こうした弊害は、中国の汽車運営総局にとってまさに頭痛の種だと言える。この解決策として「実名でチケットを購入する」という制度が、昨2009年にネットで提案されて以来、多くの人々が、この制度の実施に期待を寄せてきた。

 この制度では、旧正月の鉄道チケットは大体10日前に予約受付が始まる。予約するときは必ず身分証明書を呈示することが要求され、チケットの裏面にも購入者の身分証明書の番号が書いてある。また、当日に乗車するときには、チケットとともに身分証明書の呈示も要求される。

 1月18日の「網易新聞」によると、中国鉄道部・汽車運営総局政治宣伝部部長の王勇平は、この実名制度に異議を唱えている。彼は、実名制度がもたらしたのは手続きの煩雑化に過ぎず、かえってより深刻な交通ラッシュを起こす恐れがあるので、いい解決方法とは言えないと発言した。王勇平はまた、「引き続き、運営能力を上達させることこそが、危急の用件である」と意見を述べている。

 一方、六年前から広東省にきて働き始めた、河南省からの出稼ぎ労働者の趙玲さん(28歳)にとっては、新しい制度が試行されるというニュースは喜ばしい便りだ。「少なくとも今年はダフ屋のチケットを買わなくても家に帰られるわけです」と彼女は嬉しそうに語っている。

 

根本的な解決策に向けて

 ここ数年の、旧正月の帰省ラッシュ報道からすると、事態は極めて深刻である。一箇所に多くの人々が殺到することにより、死傷事故すら起こっている。これに対して、中国政府は旧正月になると、兵士を地方の駅に派遣し秩序を守らせることにしている。だが、交通ラッシュを根本的に解決する方法は無いのだろうか。

 旧正月の交通ラッシュを引き起こしている根本的な原因を探すと、中国の中小都市の就職問題を取り上げざるを得ない。中国では、大都市は急速に発展しつつあるが、中小都市は、まだ落後状態にある。中小都市では、もともと労働賃金が安く、また就職チャンスも少ない。そこで人々は大都市に行ってお金を稼ごうとする。したがって、国定の休みの前は、必ず帰省ラッシュが発生するのだ。

 安全で料金の安い鉄道は、人々の主要な交通手段となってきた。すでに見てきたように、旧正月を迎えるたびに、汽車運営局も政府も、周到な準備をせざるを得ない。「ならば中小都市の開発に力を入れて発展させ、大都市とのバランスを取れるように努力すればいい」という意見は、絶えずネット上で流通してきた。

 実は、中国政府は2000年から中西部の開発事業に力を入れ始めている。今年でちょうど10年目で、成果もいくつか挙がってきている。しかし中西部はあまりに広く、まだまだ発展からは落後状態にあり、この巨大なプログラムを完成するには、まだ30年もかかると予想されている。しかしいずれこの計画が完了した暁には、「春節の帰省ラッシュ」も昔話になっていることを期待したい。

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