JR高田馬場駅にホームドア設置へ

JR高田馬場駅にホームドア設置へ

背景に視覚障害者の願い

首都圏の駅でホームドア設置が進んでいる。電車が止まったときにだけ開き、乗客の転落事故を防止する。JR東日本は2011年7月、高田馬場駅を含む9駅で、2014年3月までにホームドアを設置すると発表した。高田馬場駅は周辺に日本点字図書館、日本盲人福祉センターなどの施設が集中しており、視覚障害者の団体から、ホームドア設置を求める声がJR東日本へ寄せられていた。

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  ホームドア設置のニュースを知り、日本点字図書館理事長で全盲の田中徹二さん(76)は、安堵の声をもらしている。「ホームドアがあるというだけで、駅を利用するときに精神的にまるっきり(安心感が)違いますから」

  田中さんは、JR新宿駅と東京駅で、ホームから転落したことがある。ホームの内側がどちらか分からなくなったり、ホームの端を示す黄色い点字ブロックをまたいで超えてしまったりしたことが原因と話す。「点字ブロックの幅が狭かったり、すり減ったりしていると分かりにくいんです」

  国土交通省が2011年8月に行ったアンケートによると、ホームから転落した人は、健常者を含む1400人あまりの回答のうち5パーセント未満にすぎなかった。しかし、1994年に全日本視覚障害者協議会が行った100人の視覚障害者へのアンケートでは、転落事故を経験した人は半数にのぼった。全盲の人に限ると、3分の2が事故を経験しているという。

  2011年に入ってからも、1月にはJR目白駅で、7月には東急田園都市線つくし野駅で、それぞれ全盲の男性がホームから転落し電車にはねられて死亡する事故が起きている。

  視覚障害者がホームドアのない駅で頼りにしているのが、30センチ四方の点字ブロックだ。しかし、今までに多くの不備が指摘されてきた。

  以前、点字ブロックの突起の数は、36個から41個までメーカーによってまちまちだった。そのため、日本工業規格(JIS)は2001年に、突起の数を25個、高さは5ミリと定めた。数を少なくして、突起があることをより強調したのだ。JIS規格ではないものの、ホームの内側を示す「内方線」をつけたブロックも開発された。内側がどちらか分かりやすいことに加えて、ブロックの幅が広いため一足で踏み越えにくいことも特長だ。

  しかし、すでに点字ブロックを設置していた駅には、JIS規格に合ったブロックへの張り替えが義務付けられなかったため、今もばらばらな規格のブロックが混在している。JR高田馬場駅でも、JIS規格に合ったブロックは4分の1ほどしかなく、内方線のあるブロックは一枚もないのが現状だ。

  JR東日本東京支社営業部の渡邉歩さんは「(JIS規格が定まるより)昔のブロック設置のガイドラインが誤っていたとは思っていない。そのため、摩耗、破損したものから、そのときのガイドラインに沿って順々に交換している」と話す。

  点字ブロックの改善が進まないなかで、ホームドアのより早い設置を求める視覚障害者の声は根強い。日本盲人会連合は、国土交通省に対してホームドアの設置を推進するよう求める要望書を毎年提出してきた。副会長を務める時任基清さん(78)は、高田馬場駅へのホームドア設置について「一部の駅だけにホームドアがあっても意味がない。まずは山手線すべてに早くホームドアを設置してほしい」と話す。

  現在、山手線でホームドアがあるのは2駅のみ。JR東日本は発表で、一部を除く山手線の全駅で、約500億円かけて2017年度末までにホームドアを設置する計画の前倒しを検討することも表明している。障害者の「一刻も早く」と願う声は、ようやく届き始めているようだ。

 

【写真】JR東日本目黒駅に試験的に導入されたホームドア。ホームに電車が入った後に柵が開く仕組みだ。

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※この記事は、2011年度J-School春学期授業「ニューズルームD(朝日新聞提携講座)」(林美子講師)において作成しました。

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