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「つながる」楽しさをアートで

東京・代々木に今年4月、アート雑貨の店がオープンした。店長は、サラリーマンを辞めて挑戦する葛原信太郎さん(23)。店は「共有空間」という「アートでつながる世界」を目指す団体の活動拠点も兼ねる。「TetotE(てとて)」という店名には、人と人とが「つながる」ことへの思いが込められている。

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『今』の大切さに気付いた瞬間は...

  葛原さんは1年前、大学を卒業してシステムエンジニアとして就職。入社してすぐに、職場環境や人間関係に悩み、辞めたいと思った。同期と励まし合い、夢や未来を語り、仕事に向きあい始めた矢先、同期の一人が突然亡くなった。「『いつか』は存在しないと思った。あるのは『今』だけ。今やるしかない」。

  仕事を辞めて、今本当にやりたいことをしよう。そうは思っても決心がつかないでいたある日、通勤途中の京葉線で雑誌を読んでいて、自分とほぼ同世代のシステムエンジニアが、会社を辞めてお店を持つという読者からの投稿記事を見つけた。

  この人はすでに一歩を踏み出している。そう思ってふと顔をあげると、窓の外に青い海と真っ青の空が広がっていた。「もう辞めよう、今だ」。その日のうちに上司に辞意を伝えた。

 

人とのつながりが喜びを生んだ

 

  今できること、やりたいことを考えたとき、学生の頃から続けている「共有空間」の活動が思い浮かんだ。障害者の施設を訪問したり、「人=人(ひとびと)」というイベントを開催したり。そこでは、一つの絵をみんなで描く。音楽に合わせてみんなで手拍子をする。「人と一緒に何かをするのは、単純に楽しい」。自分たちの活動を喜んでくれる人たちの存在も知った。

  そんな活動に、周囲の反応はいつも「すごいね」というだけ。まるで他人事のようだった。葛原さんは一方で、発展途上国で住居を建てるボランティアをする「Habitat(ハビタット)」など、様々なNGO・NPO活動も経験し、世の中に起きることは巡り巡って自分とつながっていることを実感していた。

 

様々な国や世代の人がTetotE(手と手)を繋げられるように

  多くの人がもっと、自分と人、自分と物との関係を実感できるようにしたい。そんな思いで「共有空間」の仲間と議論するうちに、公共施設を借りて活動するだけでなく、販売等もできる常設店舗を持つアイデアにたどりついた。そこに行けばいつでも「つながり」を実感できる、まさに自分たちと人々との「共有空間」だ。

  店には「アートでつながる」を意識した商品が並ぶ。例えばイベント参加者が描いた絵の一部を使ったアクセサリー。購入者全員がそろうと大きな絵になる。持つと、他の購入者やその絵を描いた多くの参加者の存在を感じることができる。店はギャラリーでもあり、週末にはイベントも開催している。

  開店してから2カ月が過ぎた。お客はまだそう多くないが、自分が憧れていた会社と取引できるようになり、商品点数も少しずつ増えてきた。客がうれしそうに買っていく姿をみると、お店をやって良かったと思う。「今までは主に障害者や子どもを相手に活動してきたけれど、今後はTetotEを、様々な国や世代の人が集える場にしていきたい」と話している。

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【参考ページ】

『共有空間』 official Web Site:http://kyoyu-kukan.com/

※この記事は、10年度J-school授業「ニューズルームD(朝日新聞提携講座)」(林美子講師)において作成しました。

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