2009年10月28日
取材・執筆:宮前観/編集:坂東塁
CG制作者 瀬尾拡史さんインタビュー
今回のシンポジウムの登壇者であり、CG制作者の東京大学医学部医学科 瀬尾拡史さんにお話を伺った。
2009年10月28日
取材・執筆:宮前観/編集:坂東塁
今回のシンポジウムの登壇者であり、CG制作者の東京大学医学部医学科 瀬尾拡史さんにお話を伺った。
(瀬尾さん)鑑定書をもとに被害者の傷跡をCGを用いて説明しました。殺人事件では被害者の遺体は司法解剖に回されます。解剖医は解剖結果を鑑定書にまとめます。これまでの刑事裁判では、この鑑定書をもとに判決を下してきました。しかし鑑定書は専門用語が多く使われているため、医学の知識が十分でない人が理解するのは困難です。そこで鑑定書の内容に沿って、傷跡のCGによる説明を試みたのです。
そうですね。裁判員の方はもちろん、裁判官など法曹三者にとっても「わかりやすさ」はメリットだと思います。従来の鑑定書は分厚い紙の資料で、読むだけでも一苦労でしたから。
また鑑定書を医学者が再検証できるというメリットもあります。鑑定書に矛盾や誤りがある場合、医療の専門家は鑑定書を3次元化する過程で、それらに気づくこともできるでしょう。
制作者の恣意が入ってしまうことですね。CGは色遣いや質感によって、異なる印象を与えます。私が制作したCGが、裁判員が被告人に抱くイメージに影響を与えてしまう恐れがあるのではと懸念しています。
またCGと写真の役割分担もはっきりしていません。写真は従来の刑事裁判から使われてきましたが、裁判員制度では凄惨な写真を裁判員に見せることを避けようとする動きがあります。CGはこうした写真に取って代わるものなのでしょうか。それとも写真ではわかりにくい傷の細部などを再現することで、写真に足りない情報を補う役割を担うのでしょうか。
「CGの必要性」についてです。「CG導入の是非」に加えて、仮にCGを導入するとした場合、どの程度のクオリティーが求められるのかについても議論したい。現在、私はCGを作成する際、鑑定書を読み込み、細部まで作りこみます。しかしここまで精密なものが必要なのかと疑問に感じるときもあります。
また私のCGが使用された裁判員裁判を傍聴した上田さんには、CGが公開されたときの法廷の印象などを聞いてみたいです。
四宮さんには弁護士の視点からCGの利点や問題点の指摘をいただきたいです。CGを民事裁判で使うことができるかについても関心があります。
CGについて、対談形式のイベントを行うのは初めてなので楽しみです。裁判員制度におけるCGは、今後の活用方法など、はっきりしていない部分が多いです。そういった意味でも、実際に裁判員制度の運用に関わっている人に足を運んでほしいですね。
もちろん関係者に限らず、誰でも裁判員に選ばれる可能性があるわけですから、一人でも多くの方にCGの取り組みを知っていただきたいです。裁判院制度へのCGの導入を国へ訴えるためには、「CGは裁判員制度に必要だ」という世論の形成が重要になります。
また現在の裁判員制度は、裁判員への配慮に力を入れる一方で、制度を支える裏方への配慮は不十分な印象を受けます。裁判員の日当や裁判員を派遣する企業への協力要請なども大切ですが、CGの導入促進など、今後急増する裁判員裁判に対応するための運用面の強化についても議論できたら嬉しいです。