デイサービス施設で上腕二頭筋を披露する中島幸忠さん=2018年6月7日、横浜市保土ヶ谷区釜台町、上野貴臣撮影

当たり前のストイック 体を洗うようにトレーニング

 浮きたつ上腕二頭筋は、見る者を魅了する。国内のボディビル大会で数々の賞を獲得している横浜市在住の中島幸忠(なかじまゆきただ)さん(64)は、平日にはデイサービスの管理者としてお年寄りの方々に運動の指導を行っている。土曜日にはジムのトレーナーとして教室を開くなど、仕事の傍らハードなトレーニングを続けており、いかにしてその体を磨き上げているのか、それを支える原動力について聞いた

(トップの写真:デイサービス施設で上腕二頭筋を披露する中島幸忠さん=2019年6月7日、横浜市保土ヶ谷区釜台町、上野貴臣撮影)

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 普段のトレーニングは、仕事が終わった後の午後6時ごろから開始する。1日目には肩と上腕二頭筋を鍛え、2日目は背中、3日目は脚、4日目は胸と上腕三頭筋、という具合に日ごとに部位を分け、1日当たり2時間近くを費やす。上腕二頭筋の場合、左右交互にダンベルを持ち上げ、16kgから少しずつ重くしていく。このルーティンは、20代前半に始めた頃から継続している。残業があっても欠かさないため、帰りが22時を過ぎることもある。取材時(2019年6月)には左足のすねを骨折していたにもかかわらず、左足以外のトレーニングは継続していた。

 「まるで体を洗うのと同じような感覚」であり、むしろ「やらないと、なにかやり残したことがあるようなストレスになっちゃいますね」という。中島さんにとってのトレーニングは、生活の中にあって当たり前のものなのだ。

 根底にあるのは、かっこよくありたいという素朴な想いだ。中学生のころは、よく映画を見に行っていた。そのときに見た映画「ターザン」で、主人公の体つきや外国人の風格のかっこよさに心を奪われた。それ以来何度も海外映画を見に行くようになり、「かっこよくなりたい」という思いが無意識のうちに自分の中に刷り込まれていったという。

 50歳頃からは、年齢という壁を少しずつ感じるようになった。少し無理をすると関節を痛めたりけがが長引くようになったりすることで、強度を落とさざるを得なくなった。また、これまでと同じ重量を扱おうとしても、同じ回数は上がらなくなってきた。重量を下げ回数を増やすことで補っている。ここまで続けられるのは、「明日の自分はもっとかっこよく」という思いがあるからだ。

 楽しさを見いだせたことも原動力になっているという。始めた当初は、たとえば重量が100キロから102キロに上がったときや、トレーニング後に一時的に筋肉が大きくなっているとき、洋服を着たシルエットが自分の求めているカッコよさに近づいているときに、それがおもしろくて続けられた。「この楽しさが見いだせるかどうかで、続くかどうかが決まる」という。

 デイサービスやジムで指導する立場になってからは、見本をしっかり見せたい、自分の姿がお年寄りの方や生徒さんの目標になっていたいと思うようになった。体力的にも衰えたくない。運動によって防げる病気もある。続けてきたことで膨らんだ思いが幾重にも重なり、今の中島さんを支えている。

 「大きなケガや病気をしない限り続けていこうと思いますね」。これからもストイックな生活は続いていくのだ。

 

この記事は2019年春学期「ニューズライティング入門(朝日新聞提携講座)」(柏木友紀講師)において作成しました。

 

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