古書店主が苦言「もうちょっと勉強を、早稲田の学生さん」

 早稲田界隈には昔から多くの古書店が軒を並べている。ここ数年でいくつかの店が姿を消したが、それでもいまだに30以上の店舗が店を営んでいる。古書店の店主たちは長年、早稲田の学生と大学の移り変わりを見てきた「生き証人」でもあ…

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 早稲田界隈には昔から多くの古書店が軒を並べている。ここ数年でいくつかの店が姿を消したが、それでもいまだに30以上の店舗が店を営んでいる。古書店の店主たちは長年、早稲田の学生と大学の移り変わりを見てきた「生き証人」でもある。古書店主の目に映った早稲田の今昔をリポートする。
教科書も売れなくなった

 高田馬場駅から大学まで続く早稲田通りは、多くの学生に利用されている。しばらく歩くと、歩道の脇に古臭い本がカートや棚に並べられている古書店が連続して目に入ってくる。ほとんどの学生は授業に急いでいるのか、古書店の軒先には目もくれず学校に向かう。いつ覗いてみても古書店はガラガラ。試しに、とある店の前で昼過ぎの一時間、古書店に入る客を数えてみた。「…いち、……に、………さん…」

 結果は学生2人に社会人1人。3人とも店に入って、ものの2分もせず店を出てきた。本を購入した様子もない。

 世間では一般に読書離れと言われて久しい。古書店の店主もひしひしとそれを感じている。今の学生が本を読んでいないことは古書店主も認識している。ただそれ以上に古書店主が嘆くのは、教科書でさえ売れなくなったことだ。

 「もう学生相手じゃ商売にならない」と「A書店」の二代目店主は苦笑いする。しかし大学での定期試験で教科書を持ち込みできるとよく売れる。教科書持ち込みの試験で喜ぶのは学生だけではないようだ。

 時代の移り変わりとともに古書店にやって来る学生も減ってきたが、それは単に売上だけの話ではない。


学生とのコミュニケーションは

 白髪の角刈りで昔気質の雰囲気を醸し出す「B書房」の店主は、「昔は学生さんと付き合いがあったけど、今はない。みんなすぐに店から出て行っちゃうから」とつまらなさそうに話す。あまりにしゃべらないので、自分から話しかけることもあるという。

 かつての古書店では店主と学生の間にコミュニケーションが存在したが、現在ではそれがほとんどなくなってきている。

 品揃えにも変化が起こっている。A書店の店主は「今の学生さんは話さないし、何に興味があるかわからない。どんな本を置いたらいいのか」と困惑する。B書房では苦肉の策で数年前から受験参考書や英語教材などの実用書を取り扱うようになった。たしかに店の出入り口付近は赤本で埋め尽くされていた。これも仕方ないと店主は話す。

 A書店の店主から見ると、今の早稲田の学生は3つのタイプに分類できるという。

 「三分の一の学生は勉強しないで遊んでいる、もう三分の一は単位だけ取って満足している、残りの三分の一の人が勉強している」それを踏まえ、せめて教授の教科書と参考文献を買って読むようにとアドバイスする。

「せっかく良い学校に入ったのだから、もうちょっと頑張ってほしい」


大学の変化も一因

 A書店の店主は、大学についても手厳しい。「最近の早稲田はまるで不動産会社みたいだ。土地を買って校舎を建ててばかり」笑いながら話すが指摘は鋭い。たしかに早稲田大学ではここ10年の間だけでも多くの研究科や学科の新設が相次いでいる。以前であれば、長く在籍する教授の教科書を学生が古書店で売買するというサイクルがあった。しかし、最近は教員の入れ替わりが頻繁になり、「先生も変わって、決まった教科書が使われなくなった」という状況が起きている。

 教科書が売れなくなったことは、学生だけの問題ではなく、大学の変化も要因の一つかもしれない。

 さらに続けて、A書店の店主は「今じゃ先生でもあまり来なくなった」とも付け加える。


古書店で出会う

 学生の側にも言い分はあるようだ。学生からは、「本が安く手に入る」、「探すのが楽しい」と古書店を評価する声がある一方で、「本が汚そう」、「店が狭くて入りづらい」という不満が聞こえた。古書店で本を買うか買わないかは好みが分かれるところだ。

 巷では新書ブーム。古書店に新書を品揃えする計画はないのだろうか。

 「あんなの面白くないし、読まないね」と、B書房の店主はばっさり切り捨てる。

 たしかに、古書店の魅力は、どの大型書店でも取り扱っているような本とは異なり、珍しい本や絶版ものに出会えることだ。

 狭い店内で店主に話しかけてみるのも一興だ。「出会いの場」で大型書店とはまた違う雰囲気を楽しんでみてはどうだろうか。話したがりの店主にお説教されるかもしれないが。

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※この記事は、08年前期のJ-School講義「ニューズルームD」において、瀬川至朗先生の指導のもとに作成しました。

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