「ユース・フォー・3.11」代表の武井裕典さん=東京都品川区のオフィス前で、2017年5月12日、二神花帆撮影

継続可能なボランティア作りを目指して

学生団体代表・武井裕典さん

 「気軽に参加できて、ニーズにあったボランティアを提供したい」。千葉県市川市在住の立正大4年生、武井裕典さん(22)は、東日本大震災支援のための学生団体「Youth for(ユース・フォー)3.11」の代表を務めている。若者による東北への支援を継続的に続け、新たに関東の中山間地域へもボランティアの派遣を始めた。一時は減少傾向にあった派遣人数も、また増え始めているという。

(トップの写真:「ユース・フォー・3.11」代表の武井裕典さん=東京都品川区のオフィス前で、2017年5月12日、二神花帆撮影)

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 「ユース」は2011年3月の震災当日に、東京大生3人によって設立された。被害を受けた東北のために何かできないか、という3人の思いから、ボランティアに行きたい若者を集め、提携しているプログラムにできるだけ格安の参加費で派遣する仕組みを整えた。1日でも早い東北の復興を願いつつ、学生の社会問題への取り組みを進めたいと、6年間活動を続けてきた。

 武井さんは高校3年生だった2014年、このボランティアプログラムの一つに参加したことをきっかけに、団体のメンバーになった。16年からは代表を務めている。

 とはいえ、最初から東北に対して強い思い入れがあったわけではない。震災当時は、メディアに映し出される情景をぼんやり他人事のように見ていた程度だった。

 高校3年になり、部活を引退して時間に少し余裕ができたことをきっかけにプログラムに応募。当初は「東北に行けば自分を必要としてくれる人がいるかもしれないという自己陶酔」と「一度は被災地を見てみたいという好奇心」が混ざりあっていた。

 3泊4日を岩手県大槌町で過ごし、仮設住宅周辺の道路の雪かきをした。地元の子供達が来て一緒に雪遊びやゲームをしたり、自分と同じ年の被災者と触れ合ったりする機会もあった。

 「実際に当事者の方を目の前にすると、ボランティアと被災者という関係ではなく、ただ人対人の関係なのだと感じました」。この4日間を通じ、「東北で何かしたい、という気持ちから、目の前にいるこの人たちのために何かしたい」とはっきりと感じ、東北が自分の事になっていったという。

 他人事から我が事へ。感情や考えの変化を体験し、継続してボランティアに関わっていきたいとの思いから、「ユース」に入ることを決めた。

 

災害時リーダーの育成目指す

代表になり1年が経過した。最初は50人ほどいたスタッフも、年が経つにつれて減り、今では武井さんを含め4人になった。

 しかし、成果は、着実に現れている。通常、ボランティアの参加人数は発生直後に一気に上がるが、1年も経つと急激に減ってしまう。「ユース」からの派遣人数も、やはり年々減っていった。しかし、昨年度は盛り返し、前年度の175人を二割も上回る212人となった。今年3月31日現在、6年間に派遣したボランティアの総数は計18655人に上る。

 東日本大震災の被災地に加え、関東の中山間地域にも農業や漁業などを手伝う「体験型ボランティア」を継続的に派遣し続けたことが人数の増加につながったという。被災地がもつ社会の課題は、他地域でも共通するものが多いと考えたからだという。例えば、人口の減少、第一次産業従事者の高齢化、出生率の減少などは全国の地方が抱える課題でもある。そのため3年前から、被災地でのボランティアを通じて知り合った、福島県南相馬市から山梨県に引っ越した人の元へもボランティアを派遣している。農園を経営しており、そこで学生は農業を体験する。地域の実情を知ってもらうことが狙いだ。

 ユースのこれからの目標は各地にボランティアを派遣し、経験者を増やすこと。誰もが気負わずにまずは体験する。その後も2回、3回と参加するようになれば、ノウハウが蓄積でき、緊急災害時にはリーダーとなるボランティアを育成できる。武井さんは「震災は避けられないが、復興は出来る」との信念から、派遣を続けている。

 時には多忙さから代表になったことを後悔したり、無報酬で働くことへの葛藤もあったりする。それでも続けているのは、ボランティアに定着してしまっている「高尚なイメージを変えたい」との思いからだ。

 「ボランティアとは、自発的に無償で奉仕できる、偉い人が関わるもの」、というイメージが付いていると武井さんはいう。

「もっと気軽に参加していいし、逆にそれが何か特別えらいことでもない。誰でも気軽に参加できるボランティアの仕組みを我々で作りたい」

 

この記事は2017年春学期「ニューズライティング入門(朝日新聞提携講座)」(柏木 友紀講師)において作成しました。

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