「バル辛フェスタ」広報担当、手塚プロダクション著作権事業局の日高海さん=2017年7月12日、東京都新宿区高田馬場、手塚プロダクションのオフィスにて、黒田杏子撮影

早稲田・高田馬場の地域ブランド「内藤とうがらし」の栽培広がる

収穫期にフードイベント、9月末から

 新宿区で「内藤とうがらし」の栽培エリアが広がっている。早稲田・高田馬場エリアでも、2012年に「アトム通貨 内藤とうがらしプロジェクト」が発足。同地域の企業や学校、商店街が栽培し、収穫したとうがらしを使った料理を楽しむ恒例の「バル辛フェスタ」は今年も9月30日から5日間の開催が決まっている。地元は、更なるPRに力を入れている。

(トップの写真:「バル辛フェスタ」広報担当、手塚プロダクション著作権事業局の日高海さん=2017年7月12日、東京都新宿区高田馬場、手塚プロダクションのオフィスにて、黒田杏子撮影)

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 内藤とうがらしは約三百年前、現在の新宿一丁目から三丁目にかけての内藤新宿で栽培され、庶民の間で人気だったという。しかし、町の都市化とライバル「鷹の爪」の登場で、栽培されなくなってしまう。これを復活させようと、2010年に地域開発プロデューサー、成田重行さんを中心に再興プロジェクトがスタートした。

プランターでも栽培できるという内藤とうがらし。今の時期は青々とした実をつける=東京都新宿区高田馬場、高田馬場郵便局前にて、黒田杏子撮影

プランターでも栽培できるという内藤とうがらし。今の時期は青々とした実をつける=東京都新宿区高田馬場、高田馬場郵便局前にて、黒田杏子撮影

早稲田・高田馬場エリアの地域通貨「アトム通貨」の加盟店がこのプロジェクトに参画したのは、2012年のことだ。栽培方法を学ぶ勉強会から始まり、地元の企業や学校、商店街が栽培を始めた。現在では、100を超える団体が参加している。

栽培した内藤とうがらしは実際に収穫し、同地域で消費される。大都会新宿で、地産地消できる農産物があるというのだから驚きだ。さらに栽培を通じて、地域のネットワークが構築されるメリットもあるという。プロジェクトの開始当初から広報担当を務める手塚プロダクションの日高海さんは話す。「食をテーマに据えたことで、多くの人が参加しやすく、小学生から大人まで、早稲田・高田馬場に住む様々な年代の人が栽培してくれています」。新宿区戸塚町にあるリーガロイヤルホテル東京の中庭では毎年、苗植えが行われている。      

このつながりを活かし、地元の商店街がとうがらしを使ったオリジナル料理を提供する飲食イベント、「バル辛フェスタ」が2014年から始まった。今年は9月30日から10月4日まで開催される予定だ。

 10月4日の「とうがらしの日」にちなみ、多くの人がパンフレットを持って早稲田付近を歩き回る。「バル辛に参加したお客さん同士の会話も自然に生まれます」と、日高さん。今年は、高田馬場を中心に、28店舗が参加する見込みだ。参加店舗は、内藤とうがらしを使った特別メニューを提供する。参加者は4枚綴りの1ドリンク&1フードチケットを使いながら、食べ歩きと飲み歩きを楽しむことができる。参加店からも好評で、「出来ることなら年に2回やってほしい」という声も上がるくらいだ。普段はなかなか足を運ばない裏道のお店に挑戦しやすいことも醍醐味の一つだ。

 内藤とうがらしを使った商品も開発が進み、リーガロイヤルホテル東京で販売されている「内藤とうがらしラスク」は大人気商品だという。イベントの準備で既にてんてこまいだという日高さんは、内藤とうがらしの可能性を強く信じている。

 「アトム通貨は14年目、バル辛フェスタも今年で6期目を迎えました。商店街や地域の人から受け入れられ、イベントを毎年継続できているという点が、地域に根付いている表れだと思っています」

 プランター一つで手軽に栽培ができる内藤とうがらし。幅広い世代が栽培、収穫、調理、消費に関わることで、地域の絆はさらに強くなっていくのではないか。

 

この記事は2017年春学期「ニューズライティング入門(朝日新聞提携講座)」(柏木 友紀講師)において作成しました。

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