2014年1月20日
取材・執筆 : 李倩倩 加川直央 撮影 : 李倩倩
ハローキティショップで原産国不当表示 「日本製」表示の棚に中国製 サンリオワールドギンザ
ハローキティなどのキャラクター商品で知られるサンリオ(本社・東京、東証1部上場)の東京・銀座の直営店「サンリオワールドギンザ」で、「日本製」「MADE IN JAPAN」と明記したカードが置かれている棚に中国製の商品が陳列され、販売されていたことが早稲田大学ジャーナリズム大学院の学生らの取材班の調べで分かった。商品のタグには小さな文字で「MAED IN CHINA」と記載されているが、中には、その記載部分の上に価格表示のシールが貼られている商品もあった。取材班の指摘に対して、同店の店長は1月14日「担当者の間違いだった」と説明し、これらを是正した。
【トップの写真は、日本製を明示するカードの棚に置かれた中国製の折りたたみ傘と手提げバッグ=2014年1月4日撮影】
「サンリオワールドギンザ」は、サンリオの直営店としては最大の「フラッグシップショップ」。その店の一角に、日本製のハローキティグッズを宣伝している陳列棚がある。客の目につきやすい棚の最上部に、富士山の上にハローキティが座ったイラストに「日本製 MADE IN JAPAN」と黒字で書かれたB5サイズのオレンジ色のポップが掲げられており、その上と下に「このマークの商品は日本製です」という一文が日本語、英語、韓国語、中国語でそれぞれ記されている。さらに、その陳列棚にある複数の商品の前に、ポップと同じデザインのB9サイズのカードが置かれている。ところが、札の後ろにある商品のタグを見てみると、「MADE IN JAPAN」に混じって、「MADE IN CHINA」と書かれた商品があった。
「MADE IN CHINA」が値段シールで隠れている商品も
昨年の12月14日に記者が陳列棚を確認したところ、ハローキティをデザインした籠製の手提げバッグの前に「日本製」を示すカードが置かれていた。にもかかわらず、その手提げバッグのタグをよく見ると、「MADE IN CHINA」と明記されていた。
折り畳み傘の値段シールに隠れている「MADE IN CHINA」の表示=12月16日撮影
2日後の16日に再びその陳列棚を確認すると、「日本製」のカードは、手提げバッグの右側に傾いた状態で移動し、その後ろにはバッグとともに折り畳み傘があった。その折り畳み傘の商品タグにも「MADE IN CHINA」と書かれていた。中には商品タグの「MADE IN CHINA」という表示が価格表示のシールで隠れているものがあり、一度シールを剥がして原産国を確認した跡が見られるものもあった。
記者が1ヵ月にわたって確認
「中国製」の折りたたみ傘の前に置かれた「日本製」の表示カード。トップの写真はこの写真の中段をクローズアップしたもの=2014年1月4日撮影
今年1月4日も状況は同じだった。1月14日に店を再度訪れると、店内の商品の配置はリニューアルされており、中国製の折り畳み傘は売り切れ、「日本製」のカードは中国製の手提げバッグの前に置かれていた。記者が客として店員に「この日本製の表示はどれを指すのか」と尋ねると、棚を手で指しながら「全部ですね」と答えた。そのほかの棚でも、日本製の商品と中国製の商品が混在しており、日本製を示すカードの後方の商品が必ずしも日本製ではない状況を約1ヵ月にわたって確認できた。
また、折り畳み傘などが陳列された陳列棚の下の段には、「日本製」のカードと全く同じイラストを用い「日本のお土産に最適です」と4か国語表記されているポップが置かれていた。その段にある商品はすべて中国製だった。
「裏切られた気がする」と買い物客
買い物客は、カードの表示をどのように受け止めているのだろうか。昨年12月14日の取材時に
「日本製」を示すカード=2014年1月4日撮影
話を聞いた35歳の韓国人女性は「日本製は丈夫で、別の国で生産したものよりしっかりとしているので、信用できる」と話した。「日本製」との表記の後ろに陳列された手提げバッグが実際には中国製であることを記者から告げられると、顔色が一変。「裏切られた気がする。3,675円と値段が高いのに、日本製ではない。訴えることはしないけど、買わないことにする」と憤った。シンガポールから来たという夫婦は、日本製を示すカードを見て「海外旅行なので、時間が何より貴重なものだ。これで(日本製の商品を探す)時間の節約もできる」と話した。そのカードの後ろにある商品が実際は中国製であることを知ると、夫は「自分は男なので、デザインがよくて、質がいいなら、(日本製かどうかは)あまり気にしない」と話したが、妻は、「私は気にしています」と答えた。「ここは東京でしょう。北京や、上海じゃあるまいし。日本製が欲しいんですよ」。
同店の福田香澄店長によると、外国人観光客は全体の2~3割ぐらい。欧米の客は原産国にかかわらず着物のデザインなど日本らしいものを求める傾向があるが、中国人は日本製にこだわり、中国製を嫌がることがあるという。
消費者庁 誤解を招くような表示は不適切
景品表示法第4条第1項第3号では、原産国を誤認させるような表示を禁止している。消費者庁は同規定の一般的な見解として、「(不当表示は)故意であれ過失であれ、結果次第。誤解を招くような表示の仕方をしているのであれば、適切とはいえない。消費者が商品を買うときに表示の内容を正しく受けとめることができるかが重要だ」と指摘する。公正取引委員会は2007年、「イタリア展」などのタイトルをつけた催事場で中国製の家具を販売したことが原産国の不当な表示にあたるおそれがあるとして、伊勢丹や京王百貨店など複数の小売業者に対し警告を出した。納入業者が各店の発注産地と異なる商品を納入したことが原因だが、公取委は業界団体に対し、店が自ら表示を確認したうえで販売するよう要望書を出した。
店長 「原産国を確認しなかったミス」 陳列を修正
取材班は1月14日、福田店長に日本製の表示カードの使用状況について話を聞いた。
福田店長によると、日本製のカードは、昨年8月に全国的に展開された「MADE IN JAPANシリーズ」の販売キャンペーンとして本社からデータで送られ、別の売り場で商品を陳列する際にプリントして広告として利用していた。しかし、商品を移動する際にカードも移動し、最終的に現在の位置になったという。店長は陳列棚における日本製カードの使用に関して、店長は「ツーリストの方を
「MADE IN CHINA」の表示がはっきりと見えるように、手提げバッグの値段シールが貼り直された=2014年1月14日夕方撮影
意識してなるべく和柄の商品で固めようと陳列棚に集めていた。担当者が日本製のものと和柄など日本らしいものを一括りにして陳列してしまい、原産国を確認せずにカードを置いてしまったのは私のミスだ」と話した。陳列棚に日本製の商品と中国製の商品が混在しているという認識はなかったという。
「日本製」のマークが撤去され、全面リニューアルされたサンリオワールドギンザの商品棚=2014年1月14日夕方撮影
また、価格表示のシールについて、「シールを貼る際の決まりは特にない。しかし、バーコードや金額が記載されている部分を覆わないようにしている」と述べた。
店長は取材班の指摘を受けて「今日中に修正する」と述べ、同日の午後4時半頃に再び取材班が同店を訪れると、日本製のカードは撤去され、値段のシールも原産国が見えるように貼り直されていた。
サンリオ本社 全国220店舗に点検指示
サンリオ本社広報IR室広報課の話 日本製を示すカードで誤解を生む恐れがある店頭でのディスプレイについて、サンリオワールドギンザでは即刻商品陳列を見直しました。また、カードを供給した全国220店舗に1月14日、誤解を生む商品陳列、ポップ、カードのディスプレイがないよう点検指示をしました。今後は消費者の誤解を生まないよう注意を払います。
※この記事は2013年秋学期の実習授業「調査報道の方法」において作成しました。
合わせて読みたい
- 大臣記者会見、だれが主催?省庁と記者クラブ、7閣僚で見解不一致J-School院生の調査で判明
- 玄海町の欧州原発視察ツアー 研修? それとも単なる旅行?
- 2013年 日中関係を冷静に読む<2> 朝日新聞「新鮮日本」編集長 野嶋剛さんに聞く
- 東京マラソン、抽選方法の記録文書なし・抽選の公平さは不透明
- 戦時中の伝説が生んだ壁新聞 「石巻日日新聞」常務取締役 武内宏之さんに聞く