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「音楽の厨房」お見せします

 NHK交響楽団コンサートマスター、篠崎史紀さん(50)。熊本で室内楽のリハーサルを一般に公開する企画「マロ塾」の講師を務める。「リハーサル公開は、厨房を見せるようなもの」。観客に見てもらいたいのは、音楽が作られていく過程だ。

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 1963年、北九州市小倉生まれ。音楽教室を開く両親の影響で、「言葉を覚えるように」ヴァイオリンを身につけていった。高校卒業後、さらに勉強を深めるためウィーンに飛んだ。

 そのウィーンで、市立音楽院に通う傍ら、篠崎さんが通ったもう1つの場所があった。演奏会のリハーサルだ。音楽がどのように完成されていくのか、どこを聴いたら面白いのか……。たくさんのことを、そこで学んだ。だからこそ、完成品にこだわり、過程であるリハーサルを公開しようとしない日本はもったいない、と感じた。そうだ、自分がやろう。こうして生まれた企画は、自身のニックネームにちなんで「マロ塾」と名づけられた。

 2008年に、本格的に始動したマロ塾。年に1、2回開催され、今年5月までに9回を数える。小さな舞台を囲んで200ほどの席を設けた会場は、いつも観客でいっぱいになる。講師という立場の篠崎さんだが、自らも室内楽の一員として弾きつつ指導する。「音楽を作ることは、みんなで曲のイメージを統一すること」。そのために、観客と奏者の想像力をいかに働かせるか。篠崎さんの腕の見せどころだ。「同じ曲を聴いても、人はそれぞれ違う絵を思い描く。そのまま音にしたのではバラバラなまま。言葉で共有するところから始めないと」。わかりやすいように、身近な物にたとえたり、時に冗談を言って客席を沸かせたり……。楽しい試行錯誤が続く。それを繰り返し、やがて全員のイメージがぴたっと合う時が来る。音楽が完成する瞬間だ。「過程を見てきたからこそ、感動は大きい」。リハーサルを見る醍醐味は、そこにある。

 マロ塾で大事にしているのは、遊び心と好奇心。「好奇心さえあれば、どんなに辛いものも辛いと思わないんだよ」。にっこり微笑む。
 同時に、来場する人にも多くを求めない。「知識はいりません。むしろ、音楽に興味のない人に来てほしい。想像力だけ持って、音楽の厨房に遊びに来てください」

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※この記事は、13年度J-Schoolの授業「ニューズルームD(朝日新聞提携講座)」(矢崎雅俊講師)において作成しました。

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