都会に住む野生動物のナゾに迫る

都会にすむ野生動物のナゾに迫る

 タヌキ、ハクビシン、アライグマ……。こうした野生動物が、東京23区内にも生息している。宮本拓海さん(45)はアマチュア研究家として、都会の動物を独自に調査してきた。2008年には調査結果などを『タヌキたちのびっくり東京生活 ‐都市と野生動物の新しい共存』(技術評論社)として出版し、都会のタヌキの生息数を推定1000匹とはじき出した。調査活動は、「偶然の積み重ね」でもあったという。

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 「もともとは動物には関心がありませんでした」。1990年から出版社に勤め、プログラマー、編集者としてたまたま昆虫や魚類の図鑑の制作に携わった。当時、動物は単なる「仕事の対象」だったという。

 1998年、新たな出版企画を構想中に世田谷区でのタヌキの目撃情報を耳にした。現場に行くと、本当にタヌキを、それも複数みた。「明らかに繁殖している」。思っていた以上に自然が身近にあることに驚いた。「タヌキは誰でも知っているけど、都会のタヌキの生態はあまり知られていないのでは」と興味が湧き、独自で生態を調べ始めた。仕事の傍ら時間が限られるなか、当時広まりつつあったインターネットに目を付けた。目撃情報を募って集計して生息分布を割出すという、人が多い都会ならではの調査方法だ。

 しかしこのときは1年に数件しか情報が集まらず、調査は失敗した。1999年に出版社を退社してフリーで執筆などの活動を始めたが、調査は進まなかった。

 事態が変化したのは2000年代後半のこと。インターネットが普及するにつれて増えた目撃情報は、2006年から3年間で300件以上寄せられた。国会議事堂周辺や新宿など大都会周辺での目撃情報もあった。その2年後、活動の集大成の一つとして『タヌキたちのびっくり東京生活 ‐都市と野生動物の新しい共存』の出版が実現した。

 タヌキから始まった調査の対象は、ハクビシンなどにも広がっている。「趣味でも仕事でも、そこにはたくさんのヒントがある。自分にとって大切なものを得られるヒントが」。ありふれた日常でも、興味を大切にしてきたからこそ、今がある。次は都会のアブラコウモリの調査を始めたという。

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※この記事は、13年度J-Schoolの授業「ニューズルームD(朝日新聞提携講座)」(矢崎雅俊講師)において作成しました。

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