2012年12月10日
取材・執筆 藤井栄人 写真 段文凝
ウェブでつなぐ被災地復興 ヤフー石巻復興ベースの石森洋史さんに聞く
2012年7月末、三陸河北新報社(宮城県石巻市)のビル1階に「ヤフー石巻復興ベース」がオープンした。ネットメディアであるヤフーが被災地支援の取り組みとして展開したもので、地域内外の人や団体に対して広く開放し、継続的な支援や新サービスの構築・事業化を目指している。ネットメディアの新しい試みに自ら手を挙げて参加した石巻出身の石森洋史さんに取材した。
2012年12月10日
取材・執筆 藤井栄人 写真 段文凝
2012年7月末、三陸河北新報社(宮城県石巻市)のビル1階に「ヤフー石巻復興ベース」がオープンした。ネットメディアであるヤフーが被災地支援の取り組みとして展開したもので、地域内外の人や団体に対して広く開放し、継続的な支援や新サービスの構築・事業化を目指している。ネットメディアの新しい試みに自ら手を挙げて参加した石巻出身の石森洋史さんに取材した。
―オフィスは道路からもよく見えて開放的ですね。
コミュニケーションしやすい環境にしています。地元の方や東京から仕事で来た方、NPOの方などいろいろな人が出入りしているんですね。ここで情報交換がされたり、私たちが人と人をつなぐコーディネーターの役割を担うことで、何か新しいビジネスなどが生まれる場所にしたいと考えています。
事業としては現在、復興デパートメント注1をはじめとして、EC注2を活用したサービスに取り組んでいます。今年10月には、月命日の日に「今日は11日」というバナーがヤフートップに出るので、そこから誘導をかけた「デカプリホ」という企画をやりました。「デカくてプリプリしたホタテ」っていう(笑)。
―そうした事業の中でヤフーならではの付加価値は何ですか。
「デカプリホ」でいえば、ヤフーはこういう発想で商品を売り出していくようなブランディングのプロではありません。ヤフーができることは、東京と被災地をつなげるための企業とのマッチングだと思います、プロモーションのお手伝いは一番強いですね。ブランド化できるプロの人たちと組んでプロモーションの部分はヤフーがやりますということ。成功事例はまだまだつくれていませんが、システムとしては時間が経ち蓄積されることで機能していくと思います。
注1) 被災地特産品をウェブで販売する「復興デパートメント」プロジェクト(2011年12月OPEN)。
注2) 電子商取引(electronic commerce)の略。eコマースとも。
―被災地の情報環境や情報発信能力の実情はどうですか。
情報発信は難しいですね。一つのジレンマみたいに思っていることは、インターネットで「こういう方法がありますよ」と地元の人に教えていくことはできますが、やっぱり一番大事なのは何を伝えたいのかということです。どういうコンテンツがあってどういう商品があってとか。ここにヤフーができて駆け込んでくる人で一番多いのが「ネットにつながらないんですけど」という相談です。ヤフーだったらネットにつなげてくれるんじゃないか、と。情報発信のすごい手前のところが実情です。
―石森さんがこのプロジェクトに参加した理由は何ですか。
地元の石巻に事務所が出るということが半分です。もう一つはタイミング。たまたま副社長にお会いしたときに「今度石巻に支社つくるけど行く?」と声をかけられました。地域の活性化には興味がありましたし。今回の震災で、インターネット上でいろいろやってきましたが、まだまだと感じていました。少なくともヤフーでやれることがあると思い、石巻に来ました。
―地元の人間として、これからの復興をどう考えていますか。
外部の目って大切だなと思います。よそ者・若者・ばか者っていう街づくりに必要な3要素がありますよね。石巻にはこの3要素が必要です。被災地で浮き彫りになった課題は他の地方都市が抱く課題が先行して表面化している課題だと思うんですよね。シャッター通りだとか人口流出だとか言われますが、それは震災前からあります。地震が起き津波が来て拍車がかかったというのが今の状態ではないかと思います。
今石巻にはどこの被災地よりも多くの人やモノがいろいろ入ってきています。ここ石巻で変えることができなかったらほかの地方都市も変えることができないと思うんですね。震災でいろんな人が石巻に入ってきたのはいいことです。ここで日本を変えるような意気込みでやらないといけません。
―最後にメディアを志す学生に一言お願いします。
是非被災地に来ていただきたい。ネット上の情報だけではなくて実際に足を運んでもらいたいと思います。そして、どういうことを伝えられるのかということを被災地で感じてもらいたい。そういった情報発信がないと、被災地が忘れられるというか、もう復興したと思われてしまうんですね。若い学生が来てくれることは街の活性化にもつながります。【2012年10月26日取材】
取材を終えて
震災から1年8ヵ月余りが経ち、徐々に地域に活気が戻ってきているように感じられた。しかし、石森さんをはじめ住民の方から話をうかがうと、まだまだ手探りで復興にむけ取り組んでいるのが現状だ。ヤフーは支援室開設の際に、地元の「石巻工房」からテーブルやソファーを取り寄せている。被災地には多様な人が集まっており、そうした方々が復興に向け一体となって、さまざまな形で一生懸命取り組んでいる姿が見ることができた。(藤井栄人)
ヤフー石巻復興ベース facebookhttps://ja-jp.facebook.com/yj.ishinomaki ヤフー石巻復興ベース スタッフ・ブログ http://yld.yahoo.co.jp/ ※この記事は、2012年度J-School秋学期授業「ニューズルームB」(担当教員・瀬川至朗)を中心に作成しました。石巻地域メディア取材班のメンバーは、太田啓介、斉ガンユウ、斉藤明美、段文凝、藤井栄人、藤本伸一郎です。