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「ゴミを拾う体験を通して街づくりの意識を」 街のゴミ拾い活動を続ける伊藤陽平さんに聞く

2020年の新型コロナウイルス流行に伴い、飲食店からのテイクアウトや路上飲みが増加し、繁華街を中心に改めてゴミのポイ捨てが問題となっている。街の清掃活動を続けるグリーンバード新宿チームでは、東京都新宿区内の早稲田・西早稲田・神楽坂を中心に、清掃の他にもイベント活動を行っている。母体となるNPO団体のグリーンバードは2003年に原宿で始まり、現在、国内外で多くのチームが活動中だ。2014年に発足した新宿チームで、現在リーダーを務めている伊藤陽平さん(33)に話を聞いた。

(トップ写真:グリーンバード新宿チームのリーダー・伊藤陽平さん)

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 伊藤さんは東京都出身で、立教大学在学中に友人とIT企業を立ち上げた。以前から地域活動に関心があり、ITの仕事をする傍らで、落合の自宅から近い新宿チームに参加した。2014年当時は、新宿チームの発足直後だった。20代の若い参加者も多く、「新宿の地域活動では、今でもそうですが、グリーンバードが一番参加しやすかった」と当時を振り返る。グリーンバード新宿チームには、発足の基盤となった地域の人たちを中心に、幅広い世代が参加している。清掃のほかにも、地元の商店会を中心に、花見イベント、警察と連携した小学生向けの交通安全運動など、地域に密着した活動を続けてきた。また、早稲田地域では、早稲田祭や理工展をはじめとしたイベントなどで、学生団体とも協力してきた。伊藤さんは「新宿チームは、もともと地域の人たちのつながりがあってできた」と語る。地域の人たちが、自らの手で取り組みをつないできた歴史を持つ。

 伊藤さん自身、2015年に27歳の若さで新宿区議会議員に当選し、現職の議員として街づくりに取り組んでいる。「本来は、自分たちの街を自分たちの手できれいにすることが正常な状態」、「今はそういう意識がなくなっていることに危機感を抱いています」と強く訴える。だからこそ、ゴミ拾いの体験ができる場所として、地域の人たちの手で続けられてきたグリーンバード新宿チームは、重要な役割を果たしている。「ゴミを捨てる方は簡単」、「拾う方は面倒だから、それを自分で経験しないと」。

清掃活動には若い人たちも多く参加している=伊藤さん提供

つながりの場、コロナ禍での清掃ボランティア

 地域の人たちの手で行われてきたグリーンバード新宿チームの活動も、昨年、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けた。冒頭のゴミの増加については、「繁華街は以前からゴミが多かったので、そこまで変化は感じない」と言う。だが、マスクのゴミが増えているため、感染リスクの面から、消毒や手袋の着用、トングでの回収を徹底している。

 一方、参加者の側では明確な変化が起きている。現在、新宿チームの清掃活動は事前登録制としており、一回の人数を20人までに制限している。しかし、コロナ前に比べてむしろ応募は増えている。参加者の動機は、学校の単位を取るためにボランティアをしたいけれど機会がない、コロナ禍で人の役に立ちたくなった、などさまざまだ。

 早稲田大学の卒業生や学生の保護者など、地域に思い入れのある人に加えて、埼玉や千葉から高校生たちも来るようになった。伊藤さんも、「ゴミ拾いの体験は、大人になってからは難しいので、子供の頃に一回やってみることが大切」だと感じている。また、「最初は単位目当てでも構わない」と言う。

 だが、こうした清掃活動の機会は減っているのが現状だ。現在、同じ新宿区内で歌舞伎町の清掃を行うチームが活動停止になっている。新宿チームの伊藤さんには歌舞伎町で活動を行って欲しいという話が来ている。歌舞伎町チームはもともと、地域のホストクラブの従業員たちが中心に清掃活動をしていた。伊藤さんは、「年内に歌舞伎町の活動を始めたいが、うちで抱えるのはあと1カ所くらいが限界」と実情を口にする。

 早稲田地域でも、毎月の清掃活動が再開されている一方で、早稲田大学からの方針もあり、長年続いてきた懇親会などのイベントは開催されていない。伊藤さんは昨年から、長年の目標であった大学院に通い始めた。「本当はもっと早く入学する予定だったんですが、議員になったり途中で色々あったりしたので」と振り返る。もともと政治や経済に関心があり、現在は早稲田大学大学院の政治学研究科で公共経営などを学んでいる。「去年、全然活動ができていないので、自分が学生のうちにいっぱい知り合って、たくさんの学生に参加してほしい」と期待を込める。

 

※この記事は2021年春学期「ニューズライティング入門」(朝日新聞提携講座)」(岡田力講師)において作成しました。

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