早稲田大学ロータリーの会代表の新井国憲さん

高田馬場駅前ロータリーをきれいに 封鎖やメディアの取り上げ方には疑問 環境・まちづくりサークルの新井国憲さん

JR山手線と西武新宿線、地下鉄東西線の三つの路線が乗り入れる高田馬場駅。その駅前には島型のロータリー広場と呼ばれる場所がある。近隣には早稲田大学や東京富士大学、多くの専門学校や予備校などがひしめきあう「学生の街」として知られ、高田馬場を象徴する場所だ。そのロータリー広場は、コロナ禍以前からおのおのが持ち寄った酒類の空き缶や瓶、タバコの吸い殻などのゴミの散乱が問題になっていた。早稲田大学教育学部4年の新井国憲さん(23)は、ロータリー広場をきれいにするサークルを立ち上げた。自治体や企業・地域と連携して、ゴミを「捨てさせない」環境を作りたいという新井さん。ただ、ロータリー広場の閉鎖には違和感を覚え、ロータリー広場を「きれいな高田馬場」の象徴とすることを目指している。

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 新井さんは東京から実家のある福岡への徒歩での一人旅の中で、山中に不法投棄されるゴミを見かけた。自分にも何かできることはないかと考え、20年1月に早稲田大学ロータリーの会を立ち上げた。朝と夜の清掃が会の主な活動である。会の設立から約1年半で43名が在籍するサークルに成長し、21年6月には早稲田大学の公認サークルになった。

 活動を始めた当初は手探りの状態で、何もわからず当惑したことも多かったという。清掃活動中に酒を持った男性から「ここは無法地帯」とあおられたり、嘲笑されたりし、何度も心が折れそうになった。特に夜の清掃は、朝と全く違うという。「とても勇気がいるし、緊張する。ジロジロ見られている感じがする。楽しさもあるけれど、リスクもある」と活動の苦労を語った。

緊急事態宣言下で注目を集めるロータリー広場

封鎖されている高田馬場駅前ロータリー広場 21年7月8日 撮影:森雅博

 新型コロナウイルス感染症対策として、不要不急の外出自粛や、飲食店の営業自粛や時短営業、酒類提供の自粛の要請などが出された。21年2月の緊急事態宣言解除以降は空き缶、酒のゴミが増えたという。新井さんは「あんなに狭い場所に、何もない日で1日に空き缶が200個。本当にびっくりした」と振り返る。ロータリー広場は若者が路上飲みをする場所としてさまざまなメディアで批判的に報じられた。

 ゴミ清掃に取り組むロータリーの会の活動も複数のメディアに取り上げられた。しかし、新井さんはその取り上げられ方に疑問を感じた。

 「テレビの切り取りだと、路上飲みをしてゴミを捨てる人がいて、それを拾う僕らみたいな、善悪の構図にされてしまっている。広場自体を悪いと思っていると勘違いされている」と新井さんは困惑の表情を浮かべる。新井さんとしては、ただロータリー広場をきれいに利用してもらいたいという一心から始めた活動だった。しかし、そうしたメディアの報道を見て入会を決めた1・2年生の中にはロータリー広場自体を悪く思っている人もいるという。

封鎖されたロータリー広場

 ロータリー広場が21年5月18日に突然封鎖された。この封鎖についてロータリー広場を管轄する新宿区の担当者は、5月初旬の連休中からパトロールなどでいわゆる「路上飲み」への注意喚起をおこなってきたものの、状況が改善しないことから封鎖の判断に至ったという。広場は、現在フェンスで囲まれており、中に入ることができなくなっている。

 新井さんは、ロータリーの会はあくまでも広場があってのものだと考えていた。サークルで広場の日中開放を求めて陳情を行おうと考えたが、会として日中開放を求めることに対しては慎重な意見が出た。最終的に新井さん個人として陳情をすることになった。

 この日中開放を求める陳情を行ったことを報じた記事には厳しい批判の声が多く寄せられた。「宣言解除も高田馬場の“路上飲み”ロータリーは閉鎖を継続」というスポーツ紙の見出しに対して新井さんは、「タイトルだけを見て、記事を読まないで批判してくる人が多かった。路上飲みをしたいがために陳情していると勘違いされる見出しで、これまでの活動だったり、思いだったりをないがしろにされた気がした。批判を見ないということはできないので精神的に辛かった。」という。

 「学生街で、学生がより良くしようとしているところをくみ取ってもらいたい。日本一の学生街なのに、学生の意見がないがしろにされている、聞いてもらえない」と新井さんは語る。陳情は審査未了となり、面談要望書を担当者に出すも返答が得られていない。

 現在はコロナ後を見据えて、自治体や企業との連携強化に動いている。サークルのNPO化も考えており、ロータリー広場をより良くしていくためにこれからも活動を続けていくという。

 

※この記事は2021年春学期「ニューズライティング入門」(朝日新聞提携講座)」(岡田力講師)において作成しました。

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