左から、F/Actoryの今野誠二郎さん、宮司の風山栄雄さん、巫女の宇田川結香さん=2019年7月14日、新宿区神楽坂赤城神社、吉田光希撮影

赤城神社が七夕祭で見せた新たな一歩

 神楽坂にある赤城神社で7月7日、今年も七夕祭が行われた。地域のアーティスト団体と協力して、日本舞踊などの伝統芸能の奉納に加え、音楽ライブなどを開催した。同神社は、9年前に建て替えられた。モダンな雰囲気が話題を呼び、地域の外から若者や外国人観光客が訪れるようになった。氏神として地域を守る役割と、観光名所としての役割を持つ赤城神社を訪ねた。

(トップ写真:左から、F/Actoryの今野誠二郎さん、宮司の風山栄雄さん、巫女の宇田川結香さん=2019年7月14日、新宿区神楽坂赤城神社、吉田光希撮影)

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   赤城神社は、群馬県赤城山にその起源があり、約700年の歴史を持つ。2010年9月に完了した再生プロジェクトで生まれ変わった。鳥居を除く、境内のほぼ全てを改築し、以前幼稚園があった場所には、集合住宅を建設した。荘厳さと華やかさが共存するガラス張りの拝殿で挙げる結婚式が人気となり、建て替え前は年に数えるほどだったが、現在では年間70組以上のカップルが式を挙げる。

 プロジェクトの目的は、運営面の改善だけでなく、地域貢献にあった。施設を貸し出して、神楽坂に住む古典芸能の継承者を招き、ホールで落語の寄席を開催するなど、多目的に使えるようにした。月に一度開かれる「あかぎマルシェ」では雑貨や和小物が並ぶ。いずれもコミュニティーの結びつきを強くすることが目的で、集合住宅に併設されている「あかぎカフェ」にも、宮司の風山栄雄さん(70)の「地域の人が一息つける場所になるように」という願いが込められている。

 インスタ映えを意識し、女性が可愛い、持ちたいと思うようなオリジナルの水引ブレスレットやお守りを作成すると、雑誌で取り上げられた。外国人観光客のためには、大日本印刷と連携して参拝の方法を6ヶ国語に翻訳できる二次元バーコードを、実験的に境内のあらゆる場所に設置している。神社とゆかりの薄い若者や外国人に興味を持ってもらうことは「神社や日本の文化を守っていくために必要」と風山さんは力を込めた。

 地域の中には再生プロジェクトに反対する人もいた。斬新な建築デザインを批判する声も届いた。しかし、こうした新しい取り組みの根底には、昔から変わらない神楽坂を大切にしたいという思いがある。巫女の宇田川結香さん(27)は「地域の人に受け入れてもらうことが第一歩ですから」という。地元の頑張っている若い人に貢献したいという思いから、神楽坂で暮らす若いアーティストの団体F/Actoryとともに、今年も七夕祭を開催した。

   今回は「日本的なるもの」をテーマに据え、来場者が生け花や香道などの伝統文化を体験する機会を設けた。電子音と和楽器を融合させた音楽を届けるライブや、若い役者による奉納舞で新しさも追求した。神楽坂に住む茶道の家元によるワークショップや、神楽坂の企業に協賛を依頼し、より地域との関わりも強くした。

 今年は1500人以上が来場したが、雨もあって目標の来場者数には届かなかった。けれど、宇田川さんはこのような祭りなどのイベントを継続する重要性を感じている。「行事で人が集まれば、活気溢れた神社も続いていく」。

 訪れる人が増えれば、地域の活性化にも繋がる。神楽坂近辺には多くの大学がある。F/Actoryの今野誠二郎さん(22)は「来年機会があるならば、さらに多くの大学生とともに祭りを作り上げたい」と話す。

 

※この記事は2019年春学期「ニューズライティング入門(朝日新聞提携講座)」(柏木友紀講師)において作成しました。

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