報道で韓国と日本をつなぎたい

「日本を見れば韓国の未来が見える」という思いから、自ら東京勤務を志望したキム・ヒョンソクさん(45)は、韓国放送公社(KBS)のベテラン番組ディレクターだ。東日本大震災の被災者が、絶望の中で希望を見出していく姿を韓国の視聴者に伝え、「感動的だ」と視聴者に好評だった。

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 キムさんは東京特派員として、「世界は今」というKBSの15分番組で、1ヶ月1本のペースで日本の姿を伝えている。任期は昨年9月から3年間。通訳を通じて取材しているが、日本語は3年前から独学で習得したとは思えないくらいなめらかだ。

  今年5月、大地震で被災した宮城県南三陸町を取材して、「日本人の冷静さや落ち着き」を強く感じたという。ある高齢の女性は、消防隊員の夫が行方不明となり、1ヵ月後くらいに遺体で見つかった。やはり消防隊員だった娘のボーイフレンドも亡くなった。「何となくうつろで生きる意欲がない」と言いつつ、「自分を助けてくれた方々のためにも一生懸命生きなければ」とキムさんに語った。「最初は本当に悲しい話だと思ったのですが、できるだけ感情を抑えて語る姿をみていて、(女性のこれからの人生が)うまくいくことを祈る気持ちになりました」

  KBSでは、主に歴史番組のディレクターを務めてきた。学生だった80年代は、軍事政権下で言論統制が厳しい中、自主勉強会で軍事政権の問題点を議論し、社会問題に対する関心を深めた。東京裁判や歴史教科書問題などをテーマに番組を作り、日本取材の経験も豊富だ。「新しい事実、新しい人々と出会う過程が一番楽しい」。だからこそ、日本への赴任にも積極的だった。

  今後は、仕事を続けながら日本の大学院に進学するつもりだ。「自分が作ってきた番組が、どのような思想に基づいていたのか、その位置を論理的にとらえ直し、それを今後の番組制作に活かしたい」。

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※この記事は、2011年度J-School春学期授業「ニューズルームD(朝日新聞提携講座)」(林美子講師)において作成しました。

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