2015年2月20日
取材・執筆・撮影 : 宮本諭・翟浩氷・井上正継・陳晨・徐潔
「在東京。」 中国人留学生を想定読者にしたフリーペーパー
J-Schoolの2014年秋学期「雑誌編集入門B」(担当教員・稲垣太郎講師)が中国人留学生を読者ターゲットにしたフリーペーパー「在東京。」を完成させた。フリーペーパーの実物のPDF版と、稲垣講師による、フリーペーパーができるまでの紹介文を掲載する。
2015年2月20日
取材・執筆・撮影 : 宮本諭・翟浩氷・井上正継・陳晨・徐潔
J-Schoolの2014年秋学期「雑誌編集入門B」(担当教員・稲垣太郎講師)が中国人留学生を読者ターゲットにしたフリーペーパー「在東京。」を完成させた。フリーペーパーの実物のPDF版と、稲垣講師による、フリーペーパーができるまでの紹介文を掲載する。
フリーペーパーのPDF版はこちら
「在東京。」 中国人留学生を想定読者にしたフリーペーパー
早大非常勤講師 稲垣太郎
私が担当する実習科目「雑誌編集入門B」で5人の履修生が中国人留学生をターゲットに したフリーペーパーを完成させた。フリーペーパーの実態と経営構造を、実習を通して学ぶのがこの授業の狙いだ。4人の外部講師を招き、編集のテーマ設定から制作ノウハウ、広告や配送の基礎などを学んだ上で、自分たちが書きたいテーマと想定読者層を決め、実際に発行できる直前の段階までをシミュレーションするプログラムである。
院生5人のうち、3人が中国人留学生の女子、残り2人が日本人男子。まずそれぞれが何を書きたいかを発表した。宮本諭さんは「自分が好きな東京の銭湯を特集したい」、井上正継さんは「自宅に近い西武線沿線の知られざるスポットを紹介したい」。翟浩氷さんは、おすすめ観光スポット、陳晨さんは故郷の料理、徐潔さんは生活情報の紹介を主張した。
ばらばらな内容にどうやって横串を差し、共通の想定読者層に絞るか。話し合った結果が「中国人留学生」だった。
日本学生支援機構の調査によると、平成23年度の留学生総数は13万8075人。このうち中国からの留学生は8万7533人と他国を圧している。なかでもわが早稲田大学は彼らの憧れの的であり、キャンパスに中国語が飛び交うシーンに数多く出くわす。
想定読者を中国人留学生とすることにより、ばらばらだった5人のコンテンツは、収斂された。観光スポットや料理のレシピは、同郷の先輩からのアドバイスに。日本人院生が提供する銭湯の話や沿線情報は、珍しい日本の風習やカルチャーとして楽しく紹介された。一度も大きな風呂に裸になって入ったことがないという中国人女子2人にとっては、貴重な銭湯初体験となった。
写真や記事原稿を10ページ建ての紙面に仕立ててもらったのは、プロのウェブデザイナーだ。さすがに編集ソフトを駆使して、パソコンで紙面に落とす技術を身につけるほど、授業時間は長くない。紙面イメージを伝え、完成したのが、このフリーペーパーである。(PDF版はこちら)
タイトルもなかなか決まらなかったが、留学生女子のアイデアから「在東京。」(東京にいる)に落ち着いた。「。」を付けたのは、日本人男子の提案からだ。
広告は記事の中身によって、どんな業界の業種、会社、商品かを各自がイメージしたが、デザイナーの作業負担を考え、今回は広告制作を省いた。このため、フリーペーパーとしては未完成品であり、そのまま配れるような品質とは言えない。しかし、それでもSpork誌上で多くの学友の目に留まればとの期待もある。中国人院生たちのメッセージが後輩たちの心に響くか、日本人院生による日本のユニークな文化のありようはどう受け止められるか、楽しみであるからだ。
そして何より日中5人の院生たちと交わした、フリーペーパー制作をめぐる楽しいやりとりは、指導する身にとって至福の時間だった。
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