東京女子医大、マウスに「細胞シート」移植成功

東京女子医科大学臨床工学科の崎山亮一氏は、胃や肝臓などの内臓や壁側を包んでいる腹膜の細胞を膜状に並べた「細胞シート」を作成し、マウスへ移植することに成功した。この手法を応用すれば、人工透析の一つである腹膜透析の弱点を克服でき、腎不全患者の生活の質を大きく向上させる可能性があるという。10月29日〜30日、大阪で開催された第45回日本人工臓器学術大会で発表された。

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 体内の不要物をこし取る腎臓の機能に異常が生じたとき、人工的にその機能を補うのが透析である。腹膜透析は、腹膜を利用し、老廃物や不要な水分を腹腔内に入れた透析液に滲み出させて排出する。血液を体外の機械を用いて浄化する血液透析は週3回程度の通院が必要になるのに対し、腹膜透析は自宅で実施することが可能で、生活の自由度が高いとされる。

 

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 ところが、腹膜透析を長期間行っていると、腹膜の細胞に障害が生じて組織が硬くなり、機能が低下する「線維化」をはじめ、合併症が起きる可能性がある。このようなことが原因の一つとしてあるため、腹膜透析の利用者は、透析患者全体のわずか3〜4%にとどまっている。それも5〜6年で中止され、血液透析へと移るのが普通である。

 

 崎山氏は、腹膜表面を構成している細胞を膜状に培養したシートを傷口に貼ることで、線維化した腹膜の機能を改善させる方法を考えた。

 

 今回、崎山氏は人間の培養細胞から作った細胞シートを、腹膜障害をもつマウスに移植し、一週間後、シートの有無を確認した。その結果、シートは剥がれずに生着していた。

 

 細胞シートはいわば細胞でできたばんそうこう。これを重ね合わせていけば三次元の立体を作ることが可能であり、生体組織や臓器の再生医療への応用が期待されている。同大学先端生命医科学研究所の岡野光夫氏が開発した。角膜、膀胱組織、心筋組織、肝臓組織などへの応用研究が進んでおり、すでに一部で臨床試験に進んでいる。

 

 第45回日本人工臓器学術大会の妙中義之大会長は「再生医療だけで臓器そのものを作り出すのはまだ難しい。当分は、再生医療と人工臓器の組み合わせで医療が進んでいくだろう」と話している。

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