腹膜透析の長期化目指し「細胞シート」を研究

自分の腹膜を使って血液をきれいにする腹膜透析は月1回程度の通院ですみ、腎不全患者の生活の質(QOL)を健康人並みに保つことのできる治療法だが、開始5〜6年で腹膜の機能が落ち、長く続けられない難点を抱えていた。その克服のため、腹膜に「細胞シート」を移植して長持ちさせようという研究が進んでいる。

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腹膜透析の改良を目指し、細胞シートの研究をしている東京女子医科大学の崎山亮一さん 腎臓の病気で人工透析を受けている人は26万人。毎年1万人ずつ増加している。多くは血液を体外の機械を用いて老廃物を浄化する血液透析を受けており、週3回、1回4時間程度、病院に通わないといけない。これに対し、腹膜透析を受けている人は4%、約9000人程度だ。腹膜透析は、胃や腸などを覆っているお腹の内面の薄い膜(腹膜)を用いて老廃物を取り除く方法で、透析液の交換などは在宅でおこなうことができる。患者が不自由さを感じない反面、しばしば腹膜が次第に硬くなり腹膜透析ができなくなり、血液透析に戻る患者が多かった。  

 この腹膜透析の改良を目指して細胞シートの研究をしているのが、東京女子医科大学臨床工学科の崎山亮一さんだ。10月28日〜30日、大阪市で開かれた第45回日本人工臓器学術大会で報告した。  

 崎山さんによると、腹膜の機能が落ちるのは、透析を続けることで腹膜の表面の細胞が剥がれ落ち、組織が硬く変化することによる。そこで、細胞が欠落する部分に、腹膜と同じ細胞を体の外で増やして移植し、パッチのように補強することを考えた。  

 崎山さんは、東京女子医科大学先端生命医科学研究所の岡野教授らが開発した細胞シート工学を応用し、細胞をバラバラに培養するのではなく、腹膜の状態に近くなるようにシート状に増やし、そのまま移植する方法を考えた。作成した細胞シートをマウスの腹膜上に移植したところ、シートがうまく張り付き、実験は成功した。  

 「研究は始まったばかりで、この細胞シートで病んだ腎臓が回復するものでもない。しかし、腹膜透析が長期に持続できるようになれば、透析患者のQOLは確実に向上する。今できることを一歩ずつ進め、将来につながることを信じて、研究をしている」と崎山さんは話している。