寺子屋くらぶでさらなる学習支援事業の広がりを

学校教育の只中にいる教師は忙しく、スキルやノウハウを活かしきれていない。子どもたち一人一人とじっくり向き合う時間はなく、子供達への教育機会が充分とは言い切れないのが現状だ。そんな学校現場や子どもたちにとって救いになる取り…

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学校教育の只中にいる教師は忙しく、スキルやノウハウを活かしきれていない。子どもたち一人一人とじっくり向き合う時間はなく、子供達への教育機会が充分とは言い切れないのが現状だ。そんな学校現場や子どもたちにとって救いになる取り組みがある。NPO法人Leaning for Allの学習支援事業である。

子どもたちの成長

  Leaning for Allは、ひとりひとりの子どもの可能性が、最大限生かされる社会の実現を目指して学習支援事業を行っているNPO法人である。

  代表理事の松田悠介さんは、「日本にも教育格差があり、教育機会に恵まれていない子どもたちがたくさんいる。僕は、子どもは生まれながらに可能性を平等に持っていると思う。学校や地域、家庭環境に左右されてはいけない」と話す。

  彼らが学習支援事業として行うのは「寺子屋くらぶ」だ。昨年冬には、生活保護受給世帯の小中学生の子ども10人を対象として土曜に週1回、2ヶ月の学習支援を行った。

  全8回の寺子屋くらぶに参加した子どもたちは、成績が2~3割上昇。アンケートでも「自分はやればできる」「今までわからなかったことがわかるように」という声が9割に上ったという。

  「身近なお兄さんお姉さんが、自分のために勉強を教えてくれることが大きい。自分と向きあい、自分の可能性を引き出してくれる先生に出会えたことが、子どもたちにとっての一つのきっかけになったと思う」と松田さんは話す。

 

教師を担う”若い人”たちの成長

  派遣される教師は大学生や社会人だが、希望する人全てが教師になれるわけではない。この人であればプロフェッショナリズムを持って教えられるだろう、という人を選んでいる。

  選考に通った人には、教師として必要な教育スキルやソーシャルスキルを研修の中で与え、授業に備える。しかし、最初から上手くいくわけではないという。

  「教師たちはまず挫折から入る。子どもに伝えたいことはまったく伝わらない。東京大学や早稲田大学の肩書きなどまったく関係ない状態で、子どもたちと向き合わなければいけない。そこから、どうプロセスを踏んでいくかで彼らは成長していく」

  Leaning for Allは、子どもたちの教育機会を、また、大学生や社会人にとって自己成長する機会を、学習支援事業を通して与えている。それは次世代を担う“若い人”たちの未来を広げることにも繋がっている。

 

実現していきたい世界

  今年の春からは、教師派遣事業も始める予定だ。公立中学校に2名の教師を派遣し、主に低学力の生徒に対しての放課後指導を中心として行う。このような外からの働きかけが学校教育現場にいる先生方の手助けになっていくだろう。

  現在は首都圏が中心だが、今後、関西・九州地区でも寺子屋くらぶを展開する。そして教師派遣事業を全国的に取り組んでいけたらという。

  松田さんは「社会全体で子どもたちを育てていく」世界を目指す。

  子どもたちの未来は日本の未来だ。誰にとっても他人事ではない。彼らを取り巻く環境について、ひとりひとりが真摯に目を向けること。それが、松田さんが目指す世界を実現する第一歩である。

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【執筆・撮影:伊郷美貴】

松田悠介(まつだゆうすけ)。1983年千葉県生まれ。Learning for All 代表理事。

日本大学を卒業後、体育教師として都内の中高一貫校に勤務。千葉県市川市教育委員会やハーバード教育大学院、外資系コンサルティングファームを経てLearning for Allの創設代表者に。

Learning for All公式HP  http://www.learningforall.jp/