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映画『GONZO―ならず者ジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンのすべて―』

2005年、自宅で拳銃自殺したジャーナリストのハンター・S・トンプソン。そのアウトローさゆえにアメリカ国民から愛された彼の生涯とはどのようなものだったのか?映画『GONZO』はハンター・S・トンプソンの全貌に迫るドキュメンタリーだ。

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ハンター・S・トンプソンとゴンゾー・ジャーナリズム

  ハンター・S・トンプソンは何ともハチャメチャなジャーナリストだ。

  取材先でドラッグに溺れ、機嫌が悪い時には酒を飲みながら銃をぶっ放す。ルポの原稿料の印税を巡ってギャングに半殺しにされ、とんでもない選挙公約を掲げて保安官の選挙に名乗り出る。自分の支持する政治家を当選させるために対立候補のゴシップまがいの記事を書く。マジメな「ジャーナリスト」からすると眉をしかめるような行動を偽悪的なまでに実行する。それがトンプソン流のジャーナリズムであり、人々はそれをゴンゾー・ジャーナリズムと呼ぶのだ。

  そんなハンター・S・トンプソンを「公正」に描こうとするのが、ドキュメンタリー映画『GONZO』(監督・脚本:アレックス・ギブニー)だ。映画の中では、ゴンゾー・ジャーナリズムの「方法」について何度も紹介される。

   ギャング集団(ヘルズ・エンジェルズ)の取材方法や、1972年の大統領選挙におけるニクソンの対立候補として選出されたジョージ・マクガヴァンへの肩入れ…

  彼の取るスタイルはそれまで正統とされてきたジャーナリズムの方法や態度-「客観主義」や「公平さ」-を徹頭徹尾バカにし、無視する。あくまでも取材対象に深くコミットし、そこで濃密な関係性を築きながら記事やルポを書いていく。それがゴンゾー・ジャーナリズムの特徴なのだ。

映画『GONZO』の二つの魅力

  こういったゴンゾー・ジャーナリズムやハンター・S・トンプソンの魅力を本作では描いていくのだが、面白いのは監督のアレックス・ギブニーがトンプソンに抗うかのように映画を作っている点だ。

  映画には、トンプソンに関係する様々な人物が登場する。彼自身のインタビューはもちろん、妻から政治家まで彼と関係を持った様々な人々にその人柄について語らせることで、ハンター・S・トンプソンを描こうとする。監督のギブニーは、あくまでもこのような正当な手法にこだわりながらトンプソンの全貌を明らかにしようとするのだ。こういったジャーナリズムの「方法」を巡るある種の「対峙」が、恐らく『GONZO』の隠されたテーマの一つであり、映画そのものを面白くしている。

  トンプソンの生涯において、最も興味深いのは彼の晩年だ。トンプソンは2005年に自宅での拳銃自殺によってその生涯を終えるのだが、このトンプソンの死は私達に「ジャーナリストはどうあるべきなのか?」という倫理的問題を投げかけてくる。自殺の理由については、映画の中で様々に語られるが、一つの重要な理由として「ジャーナリストとしてのつまずき」があげられる。トンプソンはいったい何に「つまずいた」のだろうか?そして、トンプソンが自らの「死」をもって提示したジャーナリストとしての「倫理」はどのようなものであったのか?

是非、劇場で確認してもらいたい。

※なお、本作でナレーションを務めるジョニー・デップは、ハンター・S・トンプソンの生き様に魅せられた一人である。1998年には『ラスベガスをやっつけろ』(監督:テリー・ギリアム)でトンプソン役を自ら志願して演じるほどの入れ込み。この『ラスベガスをやっつけろ』もトンプソンやゴンゾー・ジャーナリズムを知る上では格好の映画となっている。
  また2011年には、トンプソンが20代の時に書いた小説”The Rum Diary”が、ジョニー・デップ主演でアメリカ・イギリスでの公開が決定している。こちらも楽しみだ。

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■「GONZO-ならず者ジャーナリスト、ハンター・S・トンプソンのすべて」公式サイト

2011/2/19(土)シアターN渋谷、シネマート新宿ほか全国ロードショー

※なお、2/4(金) 13:00〜、早稲田大学早稲田キャンパス1号館401号室にて、この映画の試写会&トークショーを開催致します。先着順、80名程度(席が埋まり次第終了)

トークショーゲスト:森達也氏、津田大介氏 司会:野中章弘氏

※本稿は、映画「GONZO」配給元であるファントム・フィルムの試写会招待・画像素材提供を受けています。原稿中で使用されている素材の著作権はHDNet Films,LLCに帰属します。