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奇跡の一日〜皆既日食観測クルーズ

 南太平洋の青空の中、ダイヤモンドリングが見えた瞬間、どこからともなく歓声と拍手がわき起こった。ここは硫黄島海域を航行するふじ丸の甲板上。兵庫県主催の「アカデミックツーリズム2009年皆既日食観測クルーズ」に参加した。

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 7月22日の太陽は午前10:00頃からゆっくりかけ始め、11:24前後、ついに皆既日食が始まった。皆既中は、黒い太陽からあふれ出すコロナが肉眼でもくっきりと見えている。気温もずいぶん下がって、それまでの焼け付く様な暑さが嘘の様だ。確かに薄暗いが目はすぐに慣れる。皆、思い思いに太陽を見上げている。何かを口走っている人、食い入るように空を見あげる人、双眼鏡を使う人、望遠鏡やカメラにしがみつく人、シャッターを切りまくる人、だれもが興奮状態だ。今世紀最長の皆既日食、しかしたったの6分30秒。撮影の手順を決めてあったがそんなことはどうでも良い。とにかくよく見よう。見える、見える、コロナの揺らめきが、昼間の水星が、金星が、地平線の夕焼けが。

 あっという間の6分半。ついに誰かが秒読みを始めた。「あと40秒」そして、再びダイヤモンドリングがきらめき、日常に放り戻された。皆既日食を完璧に見ることが出来た感動で、全員が拍手。ふじ丸の別の観測デッキででは、泣き出したり、踊りを踊った人もいたと言う。

 その日は朝から違っていた。非常に空気がすんでいる時に水平線から見える太陽の縁が一瞬緑に輝くグリーンフラッシュという現象がある。本当にまれにしか見られないと言う。日食当日の早朝4:45頃、東の方角が見える左舷デッキに上がってみた。まだ太陽は出ていない。結構雲がある。先客は20名弱、三脚をかまえる人、双眼鏡を持っている人様々である。皆に習い、カメラのズームレンズを望遠にして手持ちでファインダーを覗くこと5分位だろうか? 水平線の雲間の一部がジワーと赤みが強くなった直後、ピカッと青い閃光が見えた、というかむしろ見えたと感じたと言うのが正確だろう。あわててシャッターを押した。カシャ、カシャ、カシャと、あちらこちらでシャーター音が響いた。カメラの液晶画面で確認したが、それらしきものは写っていない。それでも肉眼では見えたので大満足して船室に引き上げた。ところが当日の日食観測後、PCで確認したら、グリーンフラッシュが写っていた。ふじ丸に乗船していた専門家から、論文に引用させて欲しいと申し込まれるほどまれにしか得られない写真だと聞いてびっくり。

 我々は運良く晴天に恵まれ、海も波がほとんど無く船の揺れは極小だった。このツアーを企画した兵庫県立西はりま天文台公園の黒田園長は運が強い事で有名とのこと。グリーンフラッシュの撮影成功に始まり、完璧な皆既日食の観測、本当に奇跡の一日だった。黒田園長はもとより、スタッフ、参加者、ふじ丸関係者の皆さんにこの場をかりて感謝したい。

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