2009年5月1日
情報流通を巡る旅(1):オバマ就任式の日に変わったホワイトハウスのウェブサイト
[写真]クリエイティブ・コモンズ提唱者のローレンス・レッシグ教授と筆者。ふたりとも明後日の方向を見ているが、これはデジカメの液晶モニターをみているため ホワイトハウスの情報戦略 日本ではあまりおおきな話題にならなかった…
2009年5月1日
[写真]クリエイティブ・コモンズ提唱者のローレンス・レッシグ教授と筆者。ふたりとも明後日の方向を見ているが、これはデジカメの液晶モニターをみているため ホワイトハウスの情報戦略 日本ではあまりおおきな話題にならなかった…
日本ではあまりおおきな話題にならなかったようだが、バラク・オバマがアメリカ大統領に就任したのにともない、ホワイトハウスの情報戦略にささやかな、しかし、大きな変化が起きている。
ホワイトハウスのウェブサイトに載っているすべてのサードパーティ・コンテンツ(投稿などの外部からの情報)が、クリエイティブ・コモンズ(ver.3.0)の「Attribution(帰属)」ライセンスで提供される条件に同意されていると明記されたのである。しかも、このライセンス表示ページはオバマ大統領の就任式のあいだにアップロードされたのである。大統領が交代した瞬間にこの方針が打ち出されたのだ。大統領府がとる政策についての、明確な意思表示とみて間違いないだろう。
このクリエイティブ・コモンズとは何だろうか? スタンフォード大学ロースクール(当時)のローレンス・レッシグ教授が提唱した、著作物の自由流通を目指す、私法的な概念であり、仕組みであり、運動である。著作権者が持つ「強固な権利」と、ネット時代に顕在化した「コンテンツの無断使用」の間にある、大きくて深い溝を埋めるべく考えられたものだ。ホワイトハウスの採用した「Attribution(帰属)」ライセンスは、このクリエイティブ・コモンズのライセンス体系のなかで一番ゆるやかなもの。「著作権者が誰か」さえ表示すれば、どのように使ってくれてもかまわないという意思表示である。極端にいえば、パロディなどの素材として使ってもかまわないということだ。
クリエイティブ・コモンズは、次のように6種類のライセンスが規定されている(ただし、これは日本での最新版であるver2.1の場合)。
(1) 表示(CC BY)
(2) 表示-改変禁止(CC BY-ND)
(3) 表示-継承(CC BY-SA)
(4) 表示-非営利(CC BY-NC)
(5) 表示-非営利-改変禁止(CC BY-NC-ND)
(6) 表示-非営利-継承(CC BY-NC-SA)
ホワイトハウスで今回アップロードされたページに掲示している「著作権者の名前さえ出ればよい」レベル(1に相当)のものから、「著作権者の表示はもちろん必要なだけでなく、お金儲けに使っちゃダメだし作り変えるのもダメ」という比較的厳しいもの(6に相当)まで、著作権者の意向を表示できるシステムが整備されている。そして、クリエイティブ・コモンズは世界47か国で、その国の著作権法制に整合するように移植され導入されているのだ。もちろん、日本にもクリエイティブ・コモンズ・ジャパンが組織され活動している。
<つづく>
【取材・執筆・撮影:藤吉とーきち】
【連載:情報流通をめぐる旅】
第1回: オバマ就任式の日に変わったホワイトハウスのウェブサイト
第2回: All right reservedってどんな意味?
第3回: クリエイティブ・コモンズの基本的思想は共有
<以下、順次掲載>