中国メディアを中国の研究者はどう見るのか

写真:講演する周葆華講師(復旦大学)  2008年11月11日に行われた早稲田大学・復旦大学共同シンポジウムにおいて四川地震における中国メディア報道について議論が行われた。  四川地震を機に中国のメディア環境は変わりつつ…

このエントリーをはてなブックマークに追加
はてなブックマーク - 中国メディアを中国の研究者はどう見るのか
Share on Facebook
Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Livedoor Clip

写真:講演する周葆華講師(復旦大学)

 2008年11月11日に行われた早稲田大学・復旦大学共同シンポジウムにおいて四川地震における中国メディア報道について議論が行われた。

 四川地震を機に中国のメディア環境は変わりつつあるのだろうか。Spork!編集者がレポートする。

中国メディアは四川大地震をどう報じたか

 今回のシンポジウムで私が一番興味を持ったのは、四川大地震時の中国メディア報道を中国の研究者はどう見たのかという点だった。2008年5月に起こったM8.0の四川大地震。地震発生後、日本でも数々の番組が組まれ、四川地震の被害状況を報道した。私自身もその後すぐ、『水トク!緊急報道スペシャル四川大地震密着三十日&徹底検証~日本を襲うM8の恐怖~』というTBSの特番にインターンとしての参加が決まり、日本のメディアが四川地震の状況を伝える番組制作の様子を実際に体験することができた。そこでの番組の柱は二点あった。

 一つは四川地震と同規模の地震が日本でも起きる可能性があるということ。そしてもう一つが、中国側が海外メディアに寛容だったということについてだった。他の番組でも、被害状況の報道とは別に今回中国側が海外メディアにどうして自由に報道させる姿勢をとったのかということが番組の軸となっていた。「中国が変わった」という議論が四川地震を期に、日本国内でにわかに沸き起こったのだった。


従来とは異なった四川報道

 中国でもやはり、四川地震報道はいままでのものとは違ったものであったと復旦大学新聞学院の周教授はシンポジウムの冒頭に強調した。実際、新華社通信は地震発生後僅か数分のうちに中国地震局からの情報を待たずして「北京で地震の揺れを感じた」と報道したそうだ。そして全国規模で報道されたこのニュースはいままでの”宣伝形式”とは違ったものだと評価されている。それだけではない。清華大学の調査によれば、93%がマスメディアの地震災害報道について満足したと答えている。中国国民は日本で報道されたように、今回の報道は透明性があり適切なものだったと感じているようだ。そして今回、特に注目されたのが新メディア空間と言われるインターネットの存在だった。コミュニティ、ブログなどのサイトに寄付金の呼びかけや人探しなどの情報が集まり、既存メディアには補完しきれない役割を担い、中国国民の団結を促進させたのだそうだ。


メディアリテラシーとのはざまで

 しかし、中国人留学生からはたびたび、「インターネットは検閲がかかっているということを国民はみんな知っていて利用している」といった話を聞く。だとしたら団結は演出されたものなのかもしれない。簡単に中国の言論統制が揺らいだといえるのだとうか。

 地震発生から二ヶ月後、復興の遅れが進み中国内外からの批判が強くなるにつれて海外メディアの行動の自由度は狭まっていった。そのことについて周教授は「危険だから怪我をしないように入れないようになったんだよ」とこともなげに答えた。しかし、日本ではそうは思われていないのが現実だ。そうした中国政府の対応を受けて、「中国は変わった」という議論は「やはり変わってなかった」というところに収束していった。それと同時に四川地震は日本では報道されなくなっていった。

「中国は変わったのだろうか」この議論はつかみどころがなく、煙のように消えてしまった。近くて遠い国、中国を実感させられたシンポジウムだった。


【勝又 千重子】