カフェで自然とのつながりを実感して

  天井が高く開放感のある空間、わらと土でできた壁や木製のテーブルがあたたかみを感じさせる。ここは東京・国分寺市にある「カフェスロー」。代表を務める吉岡淳さん(64)は、人間と自然とのつながりを取り戻…

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  天井が高く開放感のある空間、わらと土でできた壁や木製のテーブルがあたたかみを感じさせる。ここは東京・国分寺市にある「カフェスロー」。代表を務める吉岡淳さん(64)は、人間と自然とのつながりを取り戻す活動、「スロー・ムーブメント」を広げようとしている。

  「スロー」とは、「ゆっくり」。効率とスピードが求められ、ゆとりと大切なものを失っていく現代人に対する新しいライフスタイルの提案だ。吉岡さんは、衣食住と自然とのつながりを伝えるために、様々なアイデアをカフェに盛り込んでいる。フェアトレードのエクアドル産有機無農薬コーヒーを使ったり、地域を元気づけるために山形県新庄の在来種の米を炊いたり。毎週開催する「暗闇カフェ」では、照明を付けずろうそくの明かりですごす。

  吉岡さんは30年間にわたってユネスコに勤め、世界遺産保護や識字率向上のために世界を飛び回ってきた。地元に貢献できる仕事がしたいという思いから、日本ユネスコ協会事務局長を最後に退職し、2001年5月に自分の暮らす府中市に「カフェスロー」をオープンさせた(その後国分寺に移転)。

  「カフェスロー」は、「スロービジネス」の成功例としても注目されている。吉岡さんによると、「命を大切にするビジネス」のことだ。「人間は自然の恵みの中で生きているのに、便利さばかりを追い求め、本当に大事なものを見失っている。自分が持つ五感をもっと磨き、もっと活用しないと」。野菜を種から育ててみて初めて、そこに命が宿っていることが実感できる。メニューに使う食材も、葉っぱから根っこまで余すことなく、命を大事にいただく。

  収益を目的としないので、経営は厳しい。店内でフェアトレード商品を販売したり、ギャラリースペースを貸し出してテーマ性を持った芸術作品を展示したりしてまかなっている。

  吉岡さんの次の目標は、カフェの拠点を全国各地に拡大し、それぞれの地域の活性化に貢献すること。「『ここでおしまい』はなく、体が動く限りは何かをやっているんじゃないかね」

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 ※この記事は、2011年度J-School春学期授業「ニューズルームD(朝日新聞提携講座)」(林美子講師)において作成しました。