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ペットを癒してあげたい/犬も温泉に入る時代

ペットに癒されたら、今度はペットを癒してあげたい――。そんな飼い主の要望に応じて、ペット産業は様々な新しい取り組みをしている。その一つ、東京・港区のお台場にある「網吉の湯」を訪ねてみた。ここは、犬をリラックスさせるための、犬専用の温泉だ。

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  7月半ばの日曜日。暑い夏にもかかわらず、「網吉の湯」は1週間で一番忙しい日を迎えた。ここにはプール、ドッグラン、美容等、様々な施設とサービスがそろっている。プールの予約は午後だけで10人。プールで30分泳がせ、シャンプーをかけ、温泉に入り、爪切り、毛のトリミングをする。全部で2時間のフルコースを利用している客がほとんどだ。飼い主はずっとそばにいて、一緒に楽しむ。

  この日、千葉県から飼い犬のリク(2歳)とやってきた坂巻キヨミさん(41)=写真左=は、「リクは家族の一員としてここに連れて来た。大切にしたい」と話す。連れて来たきっかけは、リクの誕生日だ。千葉県にも犬の美容室と温泉はあるが、「綱吉の湯」では犬にずっと付き添っていられるので安心だし、写真も撮れるから楽しいという。「それに、ここでは犬の飼い方も教えてくれる。やっぱりリクの長生きを重視したいです」

  坂巻さんに誘われて、渡辺絢子さん(28)=写真右=もアッシュ(1歳)を連れてきた。初めての場所に興奮して、アッシュはほえ声が止まらない。だが、スタッフと遊んでいると、だんだんおとなしくなってきた。最近一人暮らしを始めた渡辺さんは、「(ペットの飼えるアパートが見つからず)アッシュは今家族の所に預けているが、早く私のそばに来て欲しい」。

  リクのコースはプールと美容で1時間4450円。2ヶ月に1回利用する。坂巻さんは、「値段は高いです。でもリラックスさせた後リクの様子を見ると、またここに連れてきたい気持ちになります」。そのリクは、満足したのか眠そうだ。常連客には、月に1、2回利用する人もいるという。店長の石田有花さん(25)は、「店の者はワンちゃんにマッサージ、泥パックをして癒しを与えているけれど、本当はワンちゃんに癒されている」と話す。

  一般社団法人ペットフード協会の調べによると、2008年の全国の犬の飼育数は1,310万1千匹、猫が1,373万8千匹、合計2,683万9千匹。一方、総務省の人口推計によると、14歳以下の子供人口は同年10月1日時点で1,717万6千人。少子高齢化が進む中で、ペット数は子供数より多いことになる。

  ただ、「綱吉の湯」のスタッフにも困る事がある。石田さんによると、ワクチンを注射されていない犬は、温泉に入れることができない。狂犬病があると他の犬に伝染する恐れがあるためだ。「とってもかわいそうです。本当に犬が大好きだから、ここで大事にして癒してあげたい」と石田さんは話している。

 

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※この記事は、10年度J-Schoolの授業「ニューズルームD(朝日新聞提携講座)」(林美子講師)において作成しました。