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お客さんと農家を結ぶ、早稲田の「新米」おむすび店

色とりどりのおむすびが並ぶ棚の間から、ひときわ巨大なおむすびが顔をのぞかせている。「いらっしゃいませ!」。おむすびを整理する手を止め、笑顔で立ちあがったのは、おむすび形のマスコットを頭にかぶった「おむすびマン」。ここ「おむすび茶屋」の店長、和田政幸さん(26)だ。農家の思いのこもったお米を多くの人々に味わってほしいと、「おむすびマン」ただいま早稲田に出没中。

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「おむすびマン」が提供するおふくろの味

  「おむすび茶屋」がオープンしたのは2010年1月14日。木目調で統一されたこぢんまりとした空間に、お米の炊きあがる温かい匂いが広がる。持ち帰りのほか、店内でもくつろいで食事ができる。

  「ワセメシ」と呼ばれる、揚げ物などボリュームを売りにした飲食店が立ち並ぶ早稲田の地で、「おむすび茶屋」のメニューは健康的だ。米本来の味が際立つ「阪本さんの塩むすび」は1個160円。玄米や雑穀米を使ったおむすびもある。

  和田さん一押しの「鮭ごまマヨネーズ」(1個180円)は、側面の青海苔と白ゴマの色が華やかだ。みそ汁には大根、人参、玉ねぎ、じゃがいも、ごぼうが入り、多くの野菜を食べられるよう工夫されている。おむすびやみそ汁に合う総菜もある。

  「一人暮らしの学生も多い早稲田で、おふくろの味を提供したい」と和田さんは話す。おむすびは、1日平均200個を手で結ぶ。栄養を考えた体に優しい味に、常連客も増えてきた。「毎日通って下さる方もいる。お客様とのコミュニケーションがうれしい」

  それでもまだ開業して約半年。和田さんは、「おむすび茶屋」を広めるきっかけ作りにも余念がない。「おむすびマン」として店頭に立つのもそのためだ。毎週月曜日と水曜日の朝8時半から、マスコット姿のまま地下鉄早稲田駅付近でクーポン券を配る。「ぎょっとされる方も多いが、可愛がってもらっている」。500円以上買えば、クーポンで50円値引きになる。

 

食の「安心」にこだわりを

  「おむすび茶屋」は「安心」にもこだわる。みそ汁や総菜に使うみそや野菜は、ほとんどが無添加無農薬の手作りだ。

  おむすびに使う米も、顔の分かる農家によって育てられたものだ。従業員の橋本直子さん(29)は「自分の食べているものって何だろう」と疑問に感じ、勤めていた役所を辞め、「おむすび茶屋」に飛び込んだという。だれがどのように作ったかが分かる野菜や米を提供することで、お客に自分の食べるものをきちんと選んで欲しいという店の願いに共感したのだ。

 

農家支援を目指して

  店の母体は実は、「メダカのがっこう」というNPO法人だ。田を耕さず、冬場でも田の水を抜かず、水中に暮らす生物の働きを活かした米作りを農家に働きかけている。多くの人がそうやって作られた米を食べる機会を増やせば、生きものの命あふれる田んぼも増えるだろう。そんな活動の一環としてスタートしたのが「おむすび茶屋」で、早稲田店は、神田神保町に続いて2店目だ。

  店内には農家を紹介する写真や、田んぼを説明する資料が展示されている。まさに「素性が分かる食べ物」だ。田植えや稲刈りなどの体験イベントにも申し込める。「お米を食べて、そのおいしいお米を作っている農家を知ってほしい。そうすることで農家を応援することにもつながる」と、和田さんは話している。

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※この記事は、10年度J-School授業「ニューズルームD(朝日新聞提携講座)」(林美子講師)において作成しました。