インタビュー 政治家/衆議院議員・大島敦さん

 政治家とはどんな人間なのだろう。ふつうの暮らしを営む私たちには、なかなか想像がつかない。  J-Schoolの院生3人がおこなった、衆議院議員・大島敦さんへのインタビューをそれぞれお届けする。 「インタビューする政治家…

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 政治家とはどんな人間なのだろう。ふつうの暮らしを営む私たちには、なかなか想像がつかない。  J-Schoolの院生3人がおこなった、衆議院議員・大島敦さんへのインタビューをそれぞれお届けする。
「インタビューする政治家」

 政治家とはどんな人間なのだろう。ふつうの暮らしを営む私たちには、なかなか想像がつかない。だが、国民の声を代弁するのが政治家の勤め。自分たちの代表が正体不明では、納得がいかない。よし、この問いをぶつけてみよう。

 

 

 教室に入ると、体格にそぐわない小さなバッジを胸につけた。「議員バッジをつけるときは、政治家のスイッチをONにするとき」。言葉通り、政治家・大島敦が私たち学生の前に現れた。

Q 久々の母校、早稲田大学に訪れた印象は?

 

「すっきりしたな、という印象です。私の学生時代は、まだ学生運動の名残があった頃で、立て看板があったり、運動家たちもいましたからね。」

 

ゆっくりと、丁寧に言葉を選びながら話す。当時を懐かしむ表情には、ほんのりと笑みが見える。

 

「戦後日本が豊かになったのは、政治の力よりも民間企業の活力」。その思いから、大学卒業後は民間企業へ就職した。しかし19年間のサラリーマン生活の末、政治の世界に飛び込んだ。

 

Q サラリーマンと政治家、二つの職業の共通点は?

 

「政治の用語で、『現状分析』とよくいいます。僕たちが社会の現状をどう認識するかということです。これは会社の用語でいう『マーケティング』と同じ事だと僕は思っているんです。ですから、サラリーマン時代の経験を、今に活かしています。」

 

「具体的には、『インタビュー』をしています。自分は、生命保険のセールスマン時代、1社1社ドアをノックして戸別訪問をやりました。ものを売ることは、相手がどんな悩みを持っているのか、という人の本音を知ることです。これは、僕にとって一つの『インタビュー』なんですね。」

 

 それまでと変わらぬ、笑みが見え隠れする表情。しかし、政治の話題となると、眼差しが鋭くなる。表情も心なしか厳しく見える。何より、もともと大きな体が輪をかけて大きく見える。

 

「今、外を歩いている皆さんには健康な人しかいないわけです。でもドアを開けた向こう側には、介護を受けている方、障害を持っている方、あるいは引きこもりの方がいるわけです。ドアを開けた向こう側の現実を知る、ということが政治家にとって一番必要なことだと思うんです。そうした現実を知った上で、政治家が政策を立案していくことが重要ですね。」

 

声だけを聞いていると、とつとつと語っているような印象を受ける。それは、聞き手の反応を見ながら話しているからだ。メモを取り終えて顔を上げると、そのことに気づかされた。

 

Q サラリーマン出身の政治家から見て、今の政治家に足りないことは?

 

「よく政治家が、『努力すれば報われる社会』と言いますね。ですが社会人、特に会社に入ってみると、努力しても報われないのはサラリーマンかもしれない、と感じるんです。今の政治家の皆さんは、極めて優秀であり、かつ出身母体や学歴なども恵まれた方たちが多いことは確かです。だからこそ、こうした立場を理解すること。そして、「努力しても報われない」という気持ちを持つということが必要なのではないかと思いますね。」

 

【岡田圭司】

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「いまの学生、どう見てますか?」

 

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大島議員は今どきの学生に「消極的というイメージ」を持っていたという。

しかし、大いに学生たちを見直したことがあったと語る。

大島議員の母校である早大の学生が、彼の学生時代と最近の学生の印象について聞いた。

 

 

 

 

 

 

Q ひさしぶりに母校のキャンパスを訪れた感想を。

 

「大隈講堂の近くの喫茶店に寄って、コーヒーを飲んでから来ました。私が通っていたころ(1970年代後半)に比べてすっきりしている。当時は立て看板がけっこうあったり、アジ演説していた学生たちがいたりしたけど、そういった政治的な風景がだいぶ少なくなっている、そういった印象を受けました」

 

Q ご自身はどんな学生でしたか。

 

「私が学んだ法学部は年に1回しか試験がなかった。授業によく出ていたという記憶はありません(苦笑)。早稲田では3つのサークルに入っていました。一つは企業法研究会、もう一つがドイツ語研究会。そして雄弁会です。この3つの部屋を渡り歩いて友だちを作っていました」

 

Q 学生時代に抱いていた将来の目標は。

 

「政治家もあったし、ビジネス、自分で仕事を起こしてみたかった。だから企業法のサークルと雄弁会に入ったわけです。会社法は全部勉強したし、当時の友人や先輩、後輩には政治やマスコミの世界ではたらいしている人も多い。いまも付き合いはあります。友達、先輩や後輩に政治やマスコミの世界で働いている人もいて、幅広く付き合いがあります」

 

Q 来ていただいてなんなのですが、Jスクールの学生インタビューを受けようと思ったのは、どうしてですか。モチベーションとかモチーフとかは。

 

「今の学生、何を考えているのかに興味があったっていうのが、一番(笑い)。どういう考えを持って、なにをしようとしているのかに興味がある。みなさんのインタビューを受けながら、どいいう視点を持っているのかなって。非常に興味深くて、聞いているんです」

 

Q そうですか・・・議員として、学生たちとつきあう機会は。

 

「以前、学生たちをインターンとして受け入れていました。非常に真面目な人たちが多かった。インターンだから報酬は出せない。彼らがもらえるのは交通費と昼飯代ぐらいなのですが、真夏でもポスティング(広報資料のポストへの投函)をしたり、一緒に駅でビラを配ったりしてくれて。私が受け入れた人たちに関しては、とてもいい線いっている感じがしました。女性の方が強いという感じがした。海外でボランティア活動をして、それから帰ってきたという人が多かったですね」

 

Q いい線というのは

 

「よく、今どきの学生は弱い感じがする、というでしょう。弱い感じ、積極的じゃなくて消極的というイメージがあった。でも彼らは積極的だったし、会話がしっかりと成り立った。伝えたことがきちんと伝わった。サラリーマン的なしつけの部分も、ちゃんと直してあげた方が彼らの人生にとってもいいと思って指導したのですが、そういう部分も真剣に応えてくれる。非常に吸収力があって、今の学生も捨てたものじゃないなと思いましたね」

 

Q 最後に、現在の学生にアドバイスを。

 

「好奇心ですね。人間に興味を持つこと。社会は人間でできているのだから、人間に着目するということは極めて大切だと思います」

 

【石川健二】

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「活動の柱はインタビューとやせ我慢」
Q 政治家としてどんなことを心がけていますか。

 

「政治家は、自分の方向とか意思を語ることも必要ですが、世の中がどうなっているのかという現状認識をしっかり持つことが大切です。今の国会議員は与党も野党も恵まれた人たちが多い集団であることは確か。一方、世の中には努力しても報われない人たちがたくさんいる。政治家に必要なのは、そういう立場を理解することだと思う」

 

Q 世の中には報われない人たちの立場を理解するために、どうするのですか。

 

「出来るだけ多くの人に会って、話を聞くことです。外を歩いている人は、健康な人が多い。でも、ドアを開けた向こう側には、介護を受けている人、障害を持っている人、あるいは引きこもっている人がいます。こうしたドアの向こう側の現実を知ることが大事。その上で政策を考えていくことが重要です。ぼくはインタビューと呼んでいます」

 

Q インタビューを続けていて気づいたことは何ですか。

 

「自分で作った政治活動のレポートを各戸に配りながら街頭演説して回った時、ある女性が声をかけてきました。その人は離婚して不安定な非正規雇用で仕事をしながら子育てをしていました。児童手当も非常に低い。そういう訴えを受けました。こうした問題は街を歩かないとわからない。インタビューは、ビジネスにとってのマーケティングです。現状を認識することという点で、同じです」

 

Q そもそも、インタビューを思いついたきっかけは何だったのですか。

 

「議員になる前、ある生命保険会社のセールスマンをしていました。飛び込みで、一社一社ドアをノックして、社長さんに会いたいといって回ります。モノやサービスを売るのは、相手がどんな悩みを持っているかなど、人の本音を聞いて初めて可能になることだと思いました。昔、田中角栄(元首相)が、政治家志望の人に言っていたのが、『戸別訪問3万軒、辻説法5万回、それをしてからもう一度来い』ということだそうです。こうやって世の中を知れということでしょう」

 

Q サラリーマン生活と政治家の暮らしの、一番の違いは何ですか。

 

「今は休みがない。国会議員は一年中、仕事から解放されることがありません。会社勤めなら、定年が来ると厚生年金や退職金がありますが、議員にはありません。老後は不安定です。病気をしたら、きびしい人生になると思います。お金も貯まらない。ぼくは政治資金集めをしません。やれば誰かにしばられるような気がするので。だから、サラリーマン時代に貯めた貯金もほとんどなくなったけど、好きな仕事だから続けられています」

 

【早見貞之】

 

インタビューを終えて

 

普段、大島氏は議員バッジをあまりつけないという。

理由は、「なくしてしまいそうだから」。

私たちの発想と何一つ変わらない。

ただ、本心はこうだろう。

「政治家の名札をつけるまでもなく、自分は政治家である」

(了)

 

0903-oshima_s.jpg大島敦(おおしま・あつし)
1956年埼玉県生まれ。早稲田大学法学部卒。日本鋼管、ソニー生命保険を経て、2000年の総選挙で民主党の候補者公募に合格し立候補、当選。現在当選3回。


※この記事は、08年前期のJ-School講義「ニューズルームE」において、刀祢館正明先生の指導のもとに作成しました。