インクジェットプリンターでオーダーメイドの人工骨!

複雑な形の造形物でも短時間で作れる3次元インクジェットプリンターを利用して製作した人工骨は、従来の人工骨に比べ体になじむ能力が高いことが、東京大学の井川和代氏らの研究でわかった。大阪で開かれた国際人工臓器学会で10月30日発表した。今回の方法で作った人工骨を患者10人のあごの骨に実際に埋め込む臨床研究を昨年3月から始めており、大きな問題は発生していないという。

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 3次元インクジェットプリンターを使うと、複雑な形の人工骨をパソコンのデータをもとに作ることができる。患者一人ひとりの患部をCT(コンピュータ断層撮影装置)で読み取り、患部に残る自分の骨にぴったりはまり込む人工骨ができる。人工骨には碁盤の目状の小さな「通り道」をあけてあり、細胞や骨髄、血管などがこの「通り道」から人工骨に入り込む。骨を壊す破骨細胞が人工骨を分解し、本物の骨に次第に置き換わっていくという。ただし、体重を支える骨や、大きな力のかかる骨に使えるほどの強度は今のところない。  

 最長実績は犬の頭蓋骨に使用した事例だ。「2年以上経過したが特に問題は発生していない。ほとんどが自分の骨に置き換わっている。」と研究チームの鄭雄一東大教授は説明した。  現在の骨の移植は、自分の腸骨(腰の骨の一部)を移植する方法が主流だ。しかし、小さな骨にしか使えないという問題を抱えている。また、従来の人工骨はリン酸カルシウムという素材を焼き固めて作っていた。体への吸収が悪いため時間が経過すると人工骨が飛び出てきてしまう難点があった。どちらの方法も手術時に医師が手作業で削って微調整をする必要があり、手術時間が長くかかった。  

 インクジェットプリンターによる人工骨について、研究チームは、自分の骨に置き換わる時間をもっと短くする手法の開発に着手している。井川氏は「血管や骨の形成を促すたんぱく質をインクジェットで人工骨作成時に吹き付ける研究を始めている。感触的には良い感じだ」と話している。

 

3次元インクジェットプリンターによる人工骨

 サラサラした砂に水をたらすと、水がしみこんだ部分だけは手で持ち上げられる程度に固まる。似た原理で、人間の骨の主成分と同じリン酸カルシウムの微粉末を2ミリ厚に敷き詰め、インクジェットノズルから薬を吹き付ける。薬がしみ込んだ部分だけが固まる。その上に再度、薄く粉末を敷き詰め薬をしみ込ませる。この繰り返しで、複雑な形の人工骨を作ることができる。パソコンからデータを送ると30分から1時間で人工骨が出来上がる。