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防災意識の大切さ、忘れないために 早稲田レスキュー

 東日本大震災から2年以上がたった。約2500人の帰宅困難者を受け入れた早稲田大学のキャンパスに、あの日の面影はもうない。そのキャンパスで、普段から地道に防災に取り組む学生団体がある。早稲田災害対策学生チーム「早稲田レスキュー」だ。

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 設立したのは、創造理工学研究科博士3年の加藤一紀さん(27)。大学にいる時に地震が起きたらどうなるのか、とふと考えたのがきっかけだった。学生はパニックに陥り、その学生を誘導しつつ帰宅困難者への対応も迫られる大学側は人手不足になるだろう、と予想がついた。「普段から学生が防災知識を身につけ、自分のとるべき行動を考える場が必要だ」。そう考えて、2007年11月に立ち上げた。

 現在のメンバーは10~15人。毎週水曜日の定例会で防災知識や技術を学び、随時開催する講演会や講習会でそれらを発信し、啓発する。モットーは、災害を自分の身に起きることとして考えること。講演会でも、自分の防災意識を見つめ直すことに重点を置く。「みなさんは、災害で死にたくないですよね」「では、死なないために、普段から何かしていますか」「死にたくないと思いながら、なぜ何もしないのですか」。集まった学生や大学職員に次々に問いを投げかけ、考えさせている。 活動を通して、自分達の意識も変わった。ベッドの周りに背の高い家具を置かない、災害時行動マニュアルを持ち歩くなど、それぞれができることを実践している。地震発生時に長い距離を歩いて帰る可能性を考え、メンバーの多くがスニーカーを履いて通学するようにもなった。「非常時にできることは、普段から考え、やっていたことだけ。みんなの意識を変えていきたい」と加藤さんは語る。

 2011年3月11日は、メンバーが大学におらず、活動できなかった。しかし翌日から準備を開始し、4月初めに1回目の震災ボランティア安全衛生講習会を開催。これから被災地ボランティアをしたいと考える学生達に、現地でのリスク管理や被災者と話す時の注意点などの情報を提供した。この頃はまだ大学側もボランティアに慎重だったが、講習をきっかけに、早稲田生が被災地ボランティアへと派遣されるようになる。講習会は6月までに6回開かれ、計500人ほどの学生がこの講習を経て被災地へ向かっていった。同時に、早稲田レスキュー自体も、石巻でのボランティアに参加。「『災害は本当に起こるんだ』と再認識しました」と、メンバーの一人、文化構想学部5年の田崎孝徳さん(22)は当時を振り返る。

 普段なかなか意識されない防災。「どうしたら伝わるか、は日々悩むところ」とメンバーは口をそろえる。他大学の防災サークルも、この課題を克服できずに短期間で消えていくものが多いという。しかし、困難があっても、災害を自分の身に起きることとして考えるという基本に常に立ち返ることで、早稲田レスキューは6年間続いてきた。「防災サークルは、存在すること自体が大事」と田崎さんは考えている。「呼びかける団体がなかったら、考えるきっかけもできない。目につくところで常に呼びかけることで、防災を考え始めるきっかけを生むような存在でありたいと思っています」

 

2013年6月
写真は、早稲田レスキューが開いた防災講演会

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※この記事は、13年度J-Schoolの授業「ニューズルームD(朝日新聞提携講座)」(矢崎雅俊講師)において作成しました。