下駄の魔法で笑顔を広げたい

サークル「下駄っぱーず」2009年度副幹事長 早稲田大学政治経済学部4年生、松井亮佑さん

下駄をはいてタップを踊る早稲田大学のダンスサークル「下駄っぱーず」が活躍の場を広げている。早稲田祭だけでなく慶応義塾大学の三田祭や赤坂BLITZでも踊った。「下駄っぷ」の魅力は何だろうか。踊っている人たちの思いは。サークル創設メンバーの一人で2009年度副幹事長を務めた松井亮佑さん(政治経済学部4年)に聞いた。【取材日:6月14日】

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 ――下駄っぱーずのダンスは下駄とタップダンスを組み合わせていて目を引きます。魅力は何ですか。

  「下駄です。浴衣を着て、下駄をはいて踊るのが斬新で面白いんだと思います」

  ――見た目以外では。

  「ダンスの動きに加えて、音でも観客を楽しませることができるところが魅力ですね。床にタップを踏んで鳴らす音も迫力があります」

  ――でも、下駄で踊るのはかなり大変なんじゃないですか。

  「たしかに歩くだけでも初めは痛くて痛くて。でも徐々に慣れてきました。やってみると、意外と簡単です」

  ――「下駄っぷ」という言葉はどのようにつけたのですか。

  「2004年に下駄っぱーずの元の活動が始まったときに、下駄とタップを組み合わせて名付けたようです。この意味のほかにもう一つ、Get up、『何かを始める』という意味も込めています」

  ――ということは、お客さんが下駄っぱーずの踊りを見て何かを始めるきっかけにしてほしいということですか。

  「そうですね。あとは、踊っているメンバーにも、何か行動を起こすきっかけとなってほしいと思っています」

  ――2004年の下駄っぱーずの元となった活動はどのように始まったのですか。

  「この年の早稲田祭運営スタッフをしていた当時大学1年生のメンバーから始まりました。運営スタッフは早稲田祭の前の地球感謝祭にも携わるんですが、それが冷めていて。もっと学生が関わって盛り上げたいって思ったのがきっかけのようです」

  ――そこからなぜダンスをしようと思ったのですか。

  「ちょうどそのころ映画『座頭市』の下駄ダンスを見て、おもしろい、早稲田っぽいと思ったことをきっかけに、何かおもしろいことをしたいと思っていた数人がこれだと思って集まったと聞いています」

  ――早稲田っぽいとは。

  「バンカラの早稲田、学ランに下駄というイメージですね」

  ――それがサークルになった。

  「いえ、少し複雑なんですが、そのままサークルになったというわけではないんです」

  ――どういうことですか。

  「運営スタッフの活動が終わると各自はもともと所属していたサークルに戻って、ばらばらになってしまって。当時のメンバーが4年生になった2007年に、最後の思い出にもう一度踊りたいと集まったんです。その4年生に誘われる形で後輩も増え、僕もそのうちの一人でした。そして、このときのメンバーで2008年にサークル化しました」

  ――松井さんはダンスの経験があったのですか。

  「初心者でしたよ。ただ、練習を見に行ってみると、メンバーが楽しそうに踊っていて、先輩からも『踊れなくてもいいからとにかく楽しんで』って言われて、気持ちも楽になって参加することにしたんです」

  ――その言葉を聞いて一気に楽になれたんじゃないですか。

  「そうなんですよ。踊りを魅せるものじゃなく、楽しむものとして考えているのが下駄っぱーずの特徴ですね」

  ――では、松井さんのように初心者でも参加しやすいということですか。

  「本当にその通りで、下駄っぱーずには初心者が多いんです。他のダンスと違って、新しいジャンルのダンスだから、皆が初めてのことなので。それで今までダンスをしたかったけどできなかった人、他のサークルには入りづらい人の受け皿にもなっています」

  ――ステージを見ると、初心者とは思えないほど迫力があって、みんな笑顔で楽しそうに踊っていますよね。踊るときに何か心がけていることはありますか。

  「上手い下手じゃなく、まず純粋に楽しむことを重視して練習しています。下駄っぱーずでは参加するメンバーが楽しみ、それを見て観客も楽しめることを『笑顔が伝染する』って言ってるんです」

  ――いいですね。踊っていて、ステージ上から観客の表情も見えますか。

  「はい。2009年の早稲田祭のとき、観客の中には泣いて見てくれている人もいました」

  ――それを見てどう感じましたか。

  「楽しそうというだけではない、何かそれ以上の思いのようなものが伝わった気がしました」

  ――早稲田祭の中で最も思い出に残っているシーンは。

  「最後の曲『Festivo』は本当に感動的でした。最後に手をあげる振りのところでは、手の上に大隈講堂と青空が見えたんです。今もあのときの光景が浮かんで胸が熱くなってきました」

 

取材を終えて

  早稲田祭で見た下駄っぱーずのステージは、びしっと揃った大きな振りと下駄の音で圧巻だった。さらに、昨年下駄ダンスコンテストで全国3位の好成績を収めるなど、踊りの技術の高さに注目していたが、松井さんが「魅せるものではなく楽しむ」ことを何度も口にしていたことは予想外だった。「笑顔が伝染する」ステージに向けて、松井さんたちの思いは後輩たちにも受け継がれてゆくのだろう。

 

下駄っぱーず

  よさこいとも違い、普通のタップダンスとも違う、新しいジャンルの踊りの団体。30人ほどで活動し、学園祭や下駄ダンスコンテストに出場している。

 

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※この記事は、2010年度J-Schoolの授業「ニューズルームE」において作成しました。

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