20101028-gomibuchi

都心の六本木で朝市 「いばらき市」の人気

「はい、いらしゃい。安くするよ」。朝6時過ぎの六本木ヒルズに、威勢のいい声が響く。毎週土曜早朝、茨城県から新鮮な野菜や果物が届き、「いばらき市」が開催される。新鮮なものが安く手に入ると人気だ。六本木や麻布かいわいの人びとに親しまれ、今年で7年目を迎えた。

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  箱詰めにされた山盛りのトマト、メロン、ナス、キュウリ。ほかにも、味噌やこんにゃく、赤飯、生花など、およそ100種類の品が、六本木ヒルズの住宅棟そばの特設会場に並ぶ。「旬を売る、ニーズに応える」をモットーに、旬であれば茨城県産以外のものも売られる。初夏であれば、秋田県産のソラマメ、栃木県産のブドウ……。

  毎回、近隣に住む人が100人ほど訪れ、7時をまわる頃にはすでに品薄状態だ。犬の散歩の途中に訪れた60代の女性は、土曜の朝はたいていいばらき市に来るという。「色んなものがあるし、親しみやすい感じがいい。近所の人たちにも朝市で会える」

  「これが甘いと思うよ」。小玉のスイカをコツコツと軽くたたいて、お客にアドバイスをするのは、いばらき市の責任者の谷川公平さん(24)。いばらき市の二代目プロジェクトマネージャーとして、仕入れから販売までを総括している。

  高校卒業後、茨城で実家の八百屋を手伝っていたが、先代のマネージャーに頼まれていばらき市に携わるようになった。茨城県の農家を訪れて、自ら交渉に当たり、農家から手に入らないものは市場をまわって直接仕入れる。「『あれ、ないの?』と要望があれば仕入れます。お客さんと直接コミュニケーションをとれるのが、朝市の魅力ですから」

  朝市当日は朝3時に、谷川さんと農家の人ら4、5人が3トントラックに品物を積んで茨城を出発。5時半には到着して準備をする。茨城県板東市でせんべい店を営む菊地文子さん(48)も、自慢のせんべいを携えて同行する。「普段も(朝は)そのくらいの時間に仕事が始まるから、つらいとは感じませんね」。狩谷光治さん(64)は、茨城で米作りをしており、いばらき市では自分が作った米や味噌を売る。「手間ひまかけて作ったものを、(お客が)目の前で買っていくでしょ。やっぱりそりゃあうれしいよ」と話す。

  いばらき市は、六本木ヒルズを統括する森ビル株式会社のグループ企業、宍戸国際ゴルフ倶楽部が主催している。茨城県内にゴルフ場を持つ縁で、地元農家の活性化にもつながればという思いから始めたという。高層マンションに住む高齢者も多い六本木ヒルズでの朝市は、買い物がしやすくなったと好評だ。そこで、もっと利用しやすくなるように、社内などから有志のボランティアが集まり、朝市を手伝っている。毎回数人が、レジを打ったり品物を袋に詰めたり、重い買い物かごを運んだりする。

  谷川さんらは今では、六本木ヒルズでの朝市が終わったその足で赤坂アークヒルズに向かう。ここで開かれるヒルズマルシェ(朝市)にも、いばらき市を出店する。毎回およそ600人が足を運ぶ。「お客さんのおかげで朝市を続けられるんです。僕らがお客さんに元気をもらえますね」と、谷川さん。

  近年、渋谷や世田谷でも、農産地とお客を結ぶ朝市が開催されている。休日の朝、ちょっと早起きして近所の朝市に足を運んでみるのも良いかもしれない。

 

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※この記事は、2010年度J-Schoolの授業「ニューズルームD(朝日新聞提携講座)」(林美子講師)において作成しました。