0909_tamura

あやしい科学を「ほうっておけばよい」と言える社会に

 世の中には、科学的なイメージをつかって都合よく話を進める人たちがいる。彼らの目的は、売名行為だったり、商品の販売だったりする。このような「ニセ科学」を防止する方法について考えてみたい。

このエントリーをはてなブックマークに追加
はてなブックマーク - あやしい科学を「ほうっておけばよい」と言える社会に
Share on Facebook
Bookmark this on Yahoo Bookmark
Bookmark this on Livedoor Clip

 世の中には、科学的なイメージをつかって都合よく話を進める人たちがいる。彼らの目的は、売名行為だったり、商品の販売だったりする。言葉の発する「波動」が水の性質を変化させると説明している本がある。この本では「ばかやろう」というラベルを貼ったびんに入れた水はきれいな氷の結晶を作ることができないとされ、一部の小学校では道徳教育にも使われた。「波動」という言葉で科学をイメージさせているが、とても科学とはいえない。このような「ニセ科学」を防止する方法について考えてみたい。

 一番わかりやすい方法として、本当の科学者に反論してもらうことが考えられる。しかし、実際には難しいという。なぜなら、ニセ科学を語る人の多くは、確信犯であり、生活がかかっている。彼らは専門家の反論に対し命がけで対抗してくる。法的手段を持ちだすかもしれない。

 こうなると専門家とはいえ本来の仕事を犠牲にしてまで、ニセ科学をつぶすことに熱意を持ち続けることは難しい。そこまで先を読んでいるのが、ニセ科学を語る人である。

 それではどうすればよいのだろうか? 月並みであるが、人々の科学的リテラシーを高めることが最も重要だと思う。アメリカの大学へ留学する際に必要な英語力検定試験「TOEFL」では、動物学、地理学、建築学、自然史、歴史、生物学、天文学、植物学、気象学、地質学、先住民、産業、技術、文学、音楽、ジャーナリズム、医学、物理学、化学に関する単語力と基礎知識が、理系・文系ともに必要とされる。全19分野中13が理系分野であり、日本と比較してはるかに広い理系の知識が常識として要求されていることがわかる。

 人々の科学的リテラシーを高める手始めに、小中学校の先生たちを対象にした勉強会を提案する。学期中は多忙な先生たちも、夏休みには、食育、PC実技、読書指導など、多様な研修会に参加する。これは通常の教科指導以外の事も学び、指導に役立てるのが目的だ。
 その一つとして、たとえば、前述の氷の結晶の話を、顕微鏡を使って検証してみてはどうだろうか。多くの視野を観察すると、話に都合のよいいびつな結晶と同時にきれいな結晶も見つかることが簡単にわかる。これでニセ科学を見抜く経験を一度はすることができる。

 先生たちがだまされないようになれば、それは子供たちにも伝わっていく。あやしい科学で説明されても誰もだまされない社会を実現するためには、多少時間がかかっても、根本解決が一番だと思う。

j-logo-small.gif

※この記事は、08年後期のMAJESTy授業「科学コミュニケーション実習2」において、青山聖子先生の指導のもとに作成しました。

合わせて読みたい

  1. 構造設計の現場に迫る (2)
  2. HIV除去精子における議論
  3. 日本の有人宇宙開発のゆくえ
  4. 現代の産婦人科が抱える問題
  5. 研究室訪問-生命科学とアートが交わる